緩リクエスト募集
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まだ陽も射す前の薄暗闇の中で、アグラヴェインは目を覚ました。
目の前でいまだ寝息をたてる番の穏やかな顔。
乱れたシーツから覗く白い鎖骨には、その穏やかさとは反対にくっきりとした歯型が赤く浮いて見えた。
起こさないように、そっとその痕をなぞる。どうしようもない己の中の独占欲と支配欲の痕。
ここだけじゃない。シーツの下にも刻まれていることをアグラヴェインは知っていた。
他でもない、己自身が付けたのだから。
発情期中であろうと、アグラヴェインが完全に理性を飛ばすことは無い。
番の、ナマエの体のどこに、どうやって痕を残したのかはきちんと記憶している。
己の中のどうしようもない欲、いつかその欲でナマエを壊してしまうのではないか。
それでももうきっと、手放すことは出来ないのだろうけど。
それ程まで自分の中の重要な場所に、ナマエを置いたのを認めて、諦めて、番になったのだ。
乱れたシーツをナマエの肩まで上げてやる。
そのままそっと、親指で頬を撫でた。
いつまでその寝顔を見ていたのか、次第に朝の陽光が柔らかく射し込んでナマエの顔を照らしていく。
まろい頬が白く光って、睫毛が影を落としてふるりと震える。
そうしてゆっくりと開いた瞳が、きらりと光るその様がどうしようもなく美しくて。
「……おはよう、アグラヴェイン」
寝起きというだけではない、行為の後のほんの少し気怠げな、どこまでも甘く柔らかで僅かに舌っ足らずな声音と笑みに、アグラヴェインは目を細めた。
「痛むところは」
「んん、ちょっと怠いだけ」
そうか、返して寝起きで癖がついた髪を梳く様に撫でてやれば、擦り寄る様にナマエの頬がアグラヴェインの手に寄せられた。
「まだ早い、寝てろ」
「んー、でも……見送りしたい、し……」
見送りたい、という言葉とは裏腹にくありと1つ漏れた欠伸と眠たげな眼にじわりと滲んだ涙を指の腹で拭ってやりながらアグラヴェインはため息を零した。
「……出る時に声をかけてやる。それまで寝ていろ」
「ぜったいだからね」
そう言ってアグラヴェインの首筋へ顔を寄せようとしたナマエは、ハッと何か思い出したように顔を上げた。
「あの、アグラヴェインの方こそ、背中、痛くない?」
背中、と言われて一瞬しかめた顔は思い当たったそれにふんっと、鼻を鳴らした。
「これくらい、傷のうちにも入らん」
見えなくとも付いているであろう、己の背中の赤い線。
ナマエが付けた欲の痕。
それが確かに自分にもあるのだという事実にどうしようもなくなって、自身がナマエへ付けた首筋の痕へ唇を落とした。
「互いに、丁度いいだろう」
柔らかく上がる口角。
どちらともなく触れ合った唇が、どうしようもなく熱かった。