5周年リクエスト記念
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最近ナマエとアシュヴァッターマンはよく行動を共にしている。
生前、争いあった仲ではあるが今このカルデアという場所では2人は良き関係を築けたのだろう。それはとても良いことだ。良いことであるはずなのに、何故かアルジュナはただ純粋にそれを喜ぶことが出来なかった。
「なんかさ、アシュヴァッターマンと一緒にいるナマエって、ちょっと幼く見えるって言うか、兄弟っぽい、っていうのかな」
少し先に見える2人を見て、マスターはそう笑って称した。
何事か話しかけたナマエの頭を乱雑にアシュヴァッターマンが撫でている。それに対して乱れた髪もそのままにナマエがどこか照れくさそうに笑い返す。
アルジュナは今まで1度もナマエのあんな姿を見たことがない。アルジュナの前に現れるナマエはいつだって髪の乱れはなく、真面目で優秀な戦士の姿をしていた。
アルジュナとナマエは友人関係だ。それなりに砕けて話した事もあるし、笑いあった事もある。
けれど、けれどアシュヴァッターマンに対してのナマエは笑みは、やはりどこか違う。長年共に過ごしたアルジュナにはそれが分かってしまった。
「……アルジュナ、どうかしたの」
心配そうに自身を覗き込むマスターに、アルジュナは「なんでもありません」と内心の曇りも振り払うように首を振った。
「ナマエ、貴方さえ良ければこの後シュミレーターに行きませんか」
鍛錬に付き合って欲しいのです、というアルジュナの誘いにいつもなら頷くナマエが申し訳なさげにほんの少し眉を下げた。
「すまない、アルジュナ。この後実は、」
「悪ぃな、俺が先約なンだわ」
言葉の先を代わって背後から現れたアシュヴァッターマンがナマエの肩を抱き寄せると、ニヤリとした笑みを浮かべてアルジュナを見た。
「……アシュヴァッターマン」
とっさに出た声が思いの外低い事に気が付いて、アルジュナはハッと自身の口に手をやってからそっとナマエを見た。
突然驚くだろう、なんて注意をするナマエはそれでも口元に笑みを浮かべていて2人の距離の近さにアルジュナは無意識に己の手をぐっと握り閉めた。
「そういう訳なんだ。すまない、アルジュナ……アルジュナ、どうかしたか」
「あ、いえ、先約がいたのならしょうがありませんね。また次の機会に誘わせてください」
アルジュナの変化を感じ取ったのだろうナマエが心配そうにこちらを覗き込むのに、笑顔でそう返す。それにアシュヴァッターマンは一瞬何か言いたげな顔をしたがむすりと口を閉ざすと行くぞ、とナマエの手を引いた。
並び立って歩く2人を見送るアルジュナの胸中は、妙にザワついていた。
これは親しい友をとられた嫉妬かと、幼い子供ではあるまいしと乾いた笑いが漏れる。
相手がかつての敵だからなのだろうか。別の誰かだったら何も思わなかったのだろうか。
そう考えてナマエの隣に立つ自分以外の別の誰かを考えては、やはり変わらずにざらりと胸に走る嫌な感触に眉を寄せた。
「……ナマエ」
遠のく背に小さく呼びかける。
その背が振り向こくことは無い。当たり前だ。この距離で、こんな小さな声で名前を呼んだとて聞こえるはずがないのに。
それなのに、それが嫌だと思ってしまう。
アシュヴァッターマンではなく自分を選んで欲しいと、自分の隣で笑って欲しいと思ってしまう。
自分はこんなにも、心の狭い人間だっただろうか。
「ナマエ」
ぽたりと滲んだ感情を覆い隠すように、アルジュナは口をそっと手で塞いだ。