キリ番リクエスト
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「犬鳴はコーギーかなぁ.......」
主である審神者のその唐突な呟きに、その日近侍であった一文字則宗は首を傾げた。
審神者の視線の先では、則宗と同じ一文字派である犬鳴一文字がいっぱいの野菜が詰まった籠を背負いながら、わんわん駆けている所で、審神者の居る執務室は、書類ばっかりやっていると気が滅入る、癒しが欲しい。という審神者の要望で、窓を開ければ目の前に庭が眺められる造りになっていて、そこからはこうして通りがかる内番中の男士や鬼ごっこや隠れんぼをして遊んでいる短刀達の姿がよく見えることが出来るのだ。
審神者の様子に、則宗は時計をチラリと見やる。
審神者が書類を捌き始めてから、かれこれ3時間が過ぎようとしていた。そろそろ集中力が切れてきた頃なのだろう。
「そうだなぁ、僕はあれはどちらかというと柴犬だと思うが」
コーギーの思わず気の抜けるようなへにゃりとした笑顔と、犬鳴の笑顔を重ねていた審神者は則宗の柴犬という案に、ほうと頷いた。
「愛嬌はあるが、元々番犬や猟犬として人と共にあっただけに、賢く勇敢で体力がある。なかなかピッタリじゃないか?」
出された柴犬の特徴と犬鳴を思い浮かべて、確かに手を叩く。
普段は元気いっぱいニコニコ笑顔の犬鳴も、戦闘時に敵を屠る姿はやはり刀剣男士らしく勇ましいのだ。
そう話していれば件の犬鳴本人が、見られていることに気が付いたようで、手を振りながら此方へ駆け寄ってきた。
「ご主人、御前!何話してたの?休憩中?」
「うん、ちょっと集中力切れちゃって。犬鳴は畑当番?」
笑顔を浮かべる犬鳴の頬に着いた土汚れを拭いながら聞けば、そうだよ!と元気な返事をあげて、背負っていた籠の中身を審神者へ見える様に両手で抱え直した。
「今日は大典太と畑当番でね、ほら!見て見てご主人、御前。大典太と一緒にいっぱいお野菜収穫したんだわんっ!」
確かに籠の中からは、胡瓜やトマト、とうもろこしといった夏野菜が顔をのぞかせていて、そのどれもが見事な出来前だった。
「ほぉ、こりゃ見事なものだな」
同じ一文字派の刀で、一文字の祖である則宗からそう言われて、犬鳴はご機嫌で鼻を鳴らした。
ふと、その後ろから同じ畑当番の大典太光世も丸い何かを両脇に抱えながらこちらへ向かって来ている。
両脇に抱えたそれが何か分かると、審神者はキラキラと目を輝かせた。
「わぁ!大典太、西瓜ももう実ってたの?」
「あぁ、この3玉はちょうど食べ頃だろう」
「そう、西瓜も採れたからね、胡瓜とかトマトと一緒にね、冷やしに行こうと思ってたんだ。だけどその前に、ご主人に見せようと思って」
ね、大典太!と、振り返る犬鳴に大典太は目を細めながらあぁ、と頷いた。
犬鳴一文字と大典太光世。明るくポジティブな犬鳴と、暗くネガティブな大典太という真逆な2振りは、前の主、同じ前田家にいた時からの交流もあり、意外なことに特段仲が良く、こうして同じ内番で組まれる事が少なくないのだ。
「冷えたら今日の晩御飯のデザートで、西瓜切ってもらうね!」
「じゃあ、それを楽しみに仕事頑張っちゃおうかな」
むきっと無い力こぶを作って見せれば、犬鳴もご主人頑張れー!と本物の力こぶを見せてくれた。可愛い顔してきちんと筋肉がついているのだ。
「じゃあね、ご主人、御前。お仕事頑張ってわんっ!」
野菜と西瓜を持ち直した2振りが、手を振りながら畑当番へと戻っていく。
「.......犬鳴が本当に犬なら、何の犬種なのかな、って話してたからかなぁ」
大きくこちらへ手を振っている犬鳴。その背後、ちょうどお尻の所らへんだろう。
「.......尻尾がさぁ、見えるんだよね」
ブンブンと勢いよく左右へ揺れるふさふさの尻尾の幻覚が、審神者の目には確かに見えていた。
「大丈夫だ、主。僕もよく見る」
犬鳴の背後に犬の尻尾が見えるのは、どうやら結構普通のことらしい。
「ついでに僕レベルになると、犬耳も見えるぞ」
則宗が言うと本気か冗談なのかは分からないが、犬鳴の頭に犬耳が付いている所は純粋に見たい。
「仕事、頑張るかぁ.......」
うんっと1度背伸びをすると、審神者は書類へと向き直った。
ちなみにその日の晩御飯は、夏野菜カレーと西瓜だった。