2021バレンタイン企画
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「はい、恵。ハッピーバレンタイン」
「ありがとうございます、ナマエさん」
普段見せることの無い、少し赤くなった頬に柔らかな笑みをのせて、伏黒恵は差し出されたチョコを受け取った。
ナマエは大昔に人魚の肉を食べて不老長寿と成った現代にまで生きる世にも珍しい男の八百比丘尼であり、恵の初恋の相手でもある。
そんな初恋の人から見るからに手作りのバレンタインチョコを貰えて、喜ばない男はいないのだ。
「ナマエさん、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい!」
「私もチョコ買ってあるから、後で交換こね」
「しゃけしゃけ、高菜!」
「ほんと毎年律儀だよな、手作りとか」
「おー、今年はこれチョコブラウニーか?」
例えそれが学生全員等しく貰える義理チョコだったとしても、嬉しいものは嬉しい。いや本音を言えば、やっぱりちょっと複雑だった。
「あー!ナマエが配ってるそれってバレンタインのやつでしょ、もちろん僕には本命くれるよね!」
聞こえてきたその声に、あぁ、面倒くさいのが来たと内心恵は思う。周りを見れば同じことを思っているのだろう野薔薇や真希も顔を顰めていた。悠仁だけが、やっほー先生!と笑顔で出迎えている。
「本命じゃないけど、悟にもちゃんとチョコ用意してあるよ」
本命チョコではない事に五条悟はえー!と声を上げた。
五条にとっても恵同様、ナマエは初恋の相手なのである。ついでに五条はその初恋を引きずって若干拗らせていたりするのだが、それはまた別の話。
はい、と差し出されたそれを受けとって、五条はピシリと固まった。
「ねぇ、これ既製品だよね。恵達のはどう見ても手作りなのに、僕のはこれ明らかに既製品だよね!?」
五条に渡されたそれは他の生徒達に配られた手作りとは違う、デパ地下とかで売ってそうなチョコの小箱。
ガーンッという効果音すら聞こえてきそうな程のリアクションをしながら、五条はナマエの肩を掴む。
「ど、どうして、まさか僕のこと嫌いなの!?いやそんな事ないよね、最強グッドルッキングガイなこの僕を嫌いになるとかそんなことないよね!?!?」
「いやだって悟前に、『手作りとか何入ってるか分かんなくて食えたもんじゃない 』って言ってたよね?」
何だ身から出た錆じゃん、なんて野薔薇が白けた目線を向けている。
五条は思い当たる節があったのか、あれは違う!と勢いよく首を振った。
「あれは媚び売ってポイント稼ぎに作られどこぞの知らない奴が作ったチョコの事を言ってたんであって、ナマエの手作りは別だから!むしろナマエの手作りが食べたいの僕は!」
ぎゃいぎゃいと駄々をこねる28歳児に生徒達は引いた。
まぁ、手作りチョコは嫌だと言った呪術界のドロドロ具合が透ける理由が理由なだけに、若干可哀想に思わないこともないが。
ナマエも五条の態度に、申し訳なさそうに眉を下げている。
「えっと、来年はちゃんとみんなと同じ手作り用意するから、ね?
今年の分の埋め合わせもするから」
その言葉にバッと五条が顔を上げる。
「じゃあ、この後一緒にデートしてよ!!」
「あ、ごめん。今日は甚爾にご飯誘われてて」
「あのプロヒモゴリラ!!!!」
五条が叫ぶのと同時に恵も頭を抱えた。
恵は実の父親の戦闘面においての実力は信頼も信用もしているが、その他の人間性とかそういう面は一切信頼も信用もしていないのだ。
そんなクソ親父と初恋の相手を2人っきりで食事に行かせるなんて選択肢、恵には存在していなかった。
「で、なんでお前らまでいんだよ」
「あはは、抜け駆けなんてさせる訳ないでしょー!」
バレンタインの礼にと2人で出かけるはずが何故かいる高専メンバー達。
「な、何かごめんね甚爾!」
ムカつくニヤつき顔でこちらを見る五条、息子とは思えないような睨みをきかせている恵、愉快犯であろう生徒達、唯一純粋に皆で遊ぶこと楽しみにしている悠仁。
メンバー順々に視線をやって、そうして甚爾は決意した。
とりあえずこのクソ五条の坊には高い飯奢らせよう。