2021バレンタイン企画
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ここ最近、ナマエは悩んでいた。
持ち前の明るさと、衛宮士郎への一途な恋心だけが取り柄の様なナマエにだって悩みの1つや2つあるのだ。まぁ、今抱えてる悩みの種はその愛する士郎に起因しているのだが。
自室で1人スマホを睨みつける。
爛々と光るディスプレイに表示されているのは、いくつかのスイーツのレシピ。そのどれもがチョコをメインに使ったものだ。
その中からいくつかをブックマークして息を着くと、カレンダーへと視線を移した。
現在2月3日。恋する全人類にとっての一大イベント、「バレンタインデー」へと既に2週間をきっていた。
「ナマエ、今日晩飯食べに来ないか?」
放課後の教室は帰り支度をする生徒、部活に行こうとする生徒達でざわざわと賑わっている。
士郎からの誘いにナマエはパッと笑顔を浮かべたものの、次の瞬間にはそれを曇らせてしまった。
「すっごくすっごく嬉しいし行きたいんだけど、今日はちょっと予定があって……」
普段なら一も二もなく頷くナマエの珍しい返事に、士郎は一瞬目を見開いたが直ぐに「そっか、また今度誘う」と返す。
ただ士郎の誘いを断るナマエという珍しい図に、ほんの少しだけざわついていた。
「ごめん、今日もちょっと予定があって……」
「……え」
士郎からの誘いを連続で断ったナマエに、放課後の教室は一気に静まり返る。
「え、あのナマエがまた衛宮の誘いを理った、だと……」
「嵐の前触れか?今日外練なんだけど」
ヒソヒソと囁き始めるクラスメイト達の声が聞こえる。士郎本人もまさか連続で断られると思っていなかったのだろう。「あ、そっか、それなら、仕方ない、な」なんて歯切れ悪く返している。
「衛宮、一応聞くがお前何かしたのか」
なんて一成が声をかけているが、特に何かをした覚えのない士郎はただ首を振る。
ただナマエが本当に残念そうに教室を出ていったことだけが、まだ救いだった。
それからもナマエが士郎からの誘いを断るという、穂群原学園2年C組にとっての異常事態は続いた。
もしやナマエに他に好きな人が出来たのでは?等とも噂されたが、ナマエから士郎への日常的な愛の告白は変わらない。ただ放課後士郎からの誘いだけは予定があると断り続けているだけなのだ。
自分は何か知らず知らずのうちに、ナマエに何かしてしまっていたのだろうかと、士郎は頭を悩ませる。けれどやはり特段何かをした覚えもないし、告白を断わっている事もいつものことなので今更その線もたぶんないだろう。
モヤモヤとした何かが士郎の中で燻る。単純に友人に誘いを断られ続けているせいなのだと自分を納得させて、今日もそそくさと1人教室を出たナマエの後ろ姿に目をやった。
「受け取ってください!!」
そう言って勢いよく差し出されたナマエの両手には、リボンでラッピングされた小箱が乗せられていた。
一連の事件からのナマエから士郎へのアクションに、クラスメイト達は密かに2人へ注目を向けた。
「勿論、本命だからね!」
「え」
かパリと蓋を開ければ、ふわりと香る甘い匂い。箱の中にあったのは、可愛らしいハート型のチョコ菓子だった。
「えへへ、ハッピーバレンタイン士郎!」
そう、今日は2月14日。恋する全人類の一大イベントバレンタイン当日である。
ナマエから贈られた本命だというそのチョコ菓子は、その言葉通り気合を入れて作られたのであろう。ハートにコーティングされたチョコ、表面にはチョコペンやトッピングシュガー等で丁寧にデコレーションまで施されている。
「その……今までこのチョコを作るので、忙しかった、のか?」
「そう、今年は桜ちゃんに遠坂さん、セイバーさんも渡すだろうから特に気合い入れて作らなきゃ!って頑張ったんだよね!」
えへへ、とはにかむナマエをぽかんとした目で見て、それから士郎はここ最近で1番の笑顔を浮かべた。
「そっか、ありがとなナマエ。ホワイトデー期待しといてくれ」
「え!?それってもしかして告白……?」
「いや、それはない」
なんて2人で笑い合う。
ここ最近士郎の胸中にあったモヤモヤは、いつしか消えていた。
「そうだナマエ、今日家に晩飯食べに来ないか?」
「行く!」
久しぶりのその返事に、今日はナマエの好物を作ってやろうと決めて、2人並んで教室を出ていった。
良かったな、衛宮。
やっと戻った日常の光景と嬉しそうな士郎の背に 穂群原学園2年C組のクラスメイト達は生暖かい視線を送ったのだった。