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ナマエは全くもって極々平凡で一般的な大学生である。
「ナマエちゃんや、ちょっと面貸せや」
例えバイトからの帰り道に、車からこのヨコハマを仕切るヤクザであり、ヨコハマディビジョン代表MAD TRIGGER CREWのリーダーである碧棺左馬刻に声をかけられていようが。
その左馬刻が乗っている車を同じくMTCのメンバーであり、1部から悪徳警官と恐れられる入間銃兎がにこやかな笑顔を浮かべながら運転していようが。
ナマエは極々平凡で一般的な大学生なのである。
即刻死に繋がる以外の食べ物は、総じて美味しく食べることが出来る。というのがナマエの持論である。
その証拠にナマエが現在かぶりついている串焼きは、野生のネズミの丸焼きであった。
「うむ、ナマエはよく食べるな。作り手として、小官も見ていて気持ちがいい」
「良かったですね、理鶯。
ナマエさんも足りないようでしたら、私達の分も気にせず食べてくださって構いませんからね」
「……おう、遠慮せずに食えや。やっぱこいつ連れて来て正解だったな」
ヨコハマの某山中、バイト帰りのナマエが半ば誘拐同然で車に押し込まれ連れてこられたのは、同じくMTCのメンバーであり元軍人である毒島メイソン理鶯の拠点であるキャンプ地。
ナマエが連れてこられた理由は単純明快、理鶯の手料理を食べさせるためである。理鶯の料理は味は美味しいのだが、如何せん材料がアレなのだ。
ナマエがかぶりついている野生のネズミしかり、焚き火の上に吊るされた鍋の中の具だって理鶯曰く「栄養価満点の幼虫」がふんだんに使われたスープだったりで、左馬刻と銃兎的には出来れば口に入れたくないものなのだ。けれど入れなければ作ってくれた理鶯に悪い。
そこで理鶯が手料理を振る舞う時には、毎度ナマエを半強制的に連れてくるのがMTCというか、左馬刻と銃兎2人の恒例行事となっているのである。
「理鶯さんの手料理美味しいし、食費浮くから俺的には有難いんですけど、バイト帰りに誘拐すんのやめてくださいよ」
ネズミを食べ終わったナマエは抗議を入れるが、聞き入れられたことは今のところ1度もない。
そう言えば、と話の延長線上でナマエが口を開く。
「銃兎さんはもしかしたら知ってるかもしれないですけど、うちのバイト先の店長、店の金盗んだとか、他にも色々ヤバいことやってたみたいで、この前逮捕されたんですよ」
ナマエのバイト先の店長は、お世辞にも良い人とは言えなかった。
女性アルバイトにはセクハラするわ、逆に男性アルバイトには理不尽な対応をするわで人望0の最低な人だったのだ。
特にナマエは、店長のセクハラから女性アルバイトを庇ったことで、余計に目をつけられ殆ど毎日怒鳴られていたのだ。
「嫌な店長がいなくなって、良かったじゃないですか。
窃盗罪に他にも余罪がある様ですから、しばらく出てこないでしょう」
くつくつ、笑う。
ナマエは知らない。
店長が横領の罪をナマエにきせようとしていたことも。
それを知った、元軍人が、悪徳警官が、ハマのヤクザが裏で動いていたことも。
そしてそれが、たった1人のために行われたことも。
「さぁ、ナマエ。スープのおかわりだ、沢山食べるといい」
「ありがとうございます、理鶯さん!」
呑気にスープを飲んでいるナマエだけが、なんにも知らないままでいる。