特殊リクエスト企画
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ナマエはケーキだ。
いや何をふざけたことを言っているんだと思うだろうが、少し話を聞いてほしい。
この世には摩訶不思議な体質を持つ人間がいる。それがケーキとフォーク。
ケーキと呼ばれる人間は、フォークにとっての甘味そのもの。
爪の先から血の一滴に至るまで、全身がこの上ない史上の甘味なのだ。
そんな捕食対象であるケーキのナマエは、いつフォークに出会うかもしれない毎日に脅えて過ごしていた。
フォークやケーキと呼ばれる人間は圧倒的に少ない。それでも出会う可能性はゼロではないのだ。
フォークに出会っても対処できるように、体術を習い、魔術も努力してそこいらの魔術師よりは強力なガンドを撃てる自信があった。
けれどそれは、あくまで人間のフォークに出会った時の対象法。
ぬるりと首筋を這う熱い舌の感覚に、ナマエはぶるりと身震いした。
「……すまぬ、やはり嫌だっただろうか」
「いや、くすぐったかっただけだから、お気になさらず」
ナマエは目の前の男を見る。
赤い目に、白い髪。自分より余程ケーキみたいな配色だよなとどうでもいい事が頭をよぎる。
サーヴァントアベンジャー、アントニオ・サリエリ。彼はフォークだった。
ナマエが今の状況を受け入れたのは、約ひと月程前のこと。
サリエリが召喚されたその日、彼は甘い匂いがするとナマエを押し倒し、その首筋に噛み付くというプチ騒動があり、そこでサリエリがフォークであることが分かったのだ。
そうして同時にナマエという甘味を摂取している時、サリエリはアマデウスに対する殺人衝動がなりを潜め、比較的落ち着いた状態を保つこと判明し、その事からナマエは定期的に、サリエリに自分の血液、または体液を提供することが決まった。
最初にそれを頼んできたダヴィチちゃんは、心底申し訳なさそうにしていたし、勿論安全策は取るが何なら断っても良いとまで言ってくれた。
けれど人理の危機のさなかで、少しでもマスターである藤丸やマシュ、他の職員たちの負担が減るならばと、ナマエはそれを受け入れ今に至るというわけだ。
そう、そういう事で今に至った訳なのだが、最初はナマエは自分の血液を注射で採取し、輸血の容量でサリエリに渡していたのだが、何故か最近になってサリエリが夜に自分の所へ直接やって来て、こうして首筋やら手首やらを舐めたり甘噛みしてくるようになったのだ。
ナマエは考える。もしやこれは本格的に自分を食べようとしているのでは?
一応、ナマエが止めてくれと言えばサリエリは止めてくれるが、サーヴァントである彼が本気を出せば自分など簡単にガブリといかれてしまうだろう。彼にとって自分は捕食対象、美味しいスイーツなのだ。あまりにも怖すぎる。
そんなナマエの怯えきった思考回路など知らぬまま、サリエリはちゅうとナマエの首筋にキスを落とすと、赤眼をとろりと歪めた。
その目付きは明らかに捕食対象に向けるものではないのだが、怯えたナマエが気づくはずもなく、自分が別の意味で食べられそうになっている危険性に気づく日は一体いつになるのだろうか。
というかたぶん、気づく頃にはもう遅い。