2020バレンタイン企画
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ゴロゴロゴロゴロ
絶妙な力減で顎下を撫でる手に、思わず鳴ってしまう喉に、おれは猫のように体をくねらせた。
ピラミッド内部、玉座に座るイケメンと、その彼の膝の上で寝転ぶおれ。
イケメンの名前はオジマンディアスさん、何と古代エジプトのファラオである。そしてそんな凄い人の膝の上でゴロゴロしてるおれの名前はナマエ。スフィンクスアウラードである。
スフィンクスアウラードって何かって?おれもよく知らない。スフィンクスって神獣の子供らしい。
今は不思議生物のおれは、驚くことに元々人間だった。
前世は極々普通のサラリーマン、トラックに跳ねられて死んだと思ったら何故かスフィンクスアウラードに生まれ変わっていた。
高校生から小学生になってしまった某探偵より、驚きの展開である。
最初はもちろん混乱もしたけれど、今はこのカルデアという施設で、それなりに幸せに暮らしている。
ふと、オジマンディアスさんがおれを撫でる手を止める。
「如何したニトクリス。太陽の光輝を前にして、天空が何を暗い顔をしている」
オジマンディアスさんの言葉にニトクリスさんの方へ顔を向ければ、確かに彼女はその綺麗な顔に悩ましげに歪めていた。
どうやらニトクリスさんは同盟者、マスターに贈るバレンタインのチョコレートで悩んでいるらしい。
いつのどこであろうと女性の悩みは変わらないんだなと、変なところで関心してしまう。
まぁ、生前のおれにバレンタインって無縁の行事だったんだけど。
そんな悲しい過去に思いを馳せていれば、どうやら話の流れ的に、オジマンディアスさんがニトクリスさんのチョコに祝福?だかなんだかをするらしい。ニトクリスさんはひどく慌ててたけど、1度決めたらオジマンディアスさんは止まらない。止められない。
ニトクリスさんが助けを求めるように俺の方を見る。ごめんニトクリスさん、おれにはどうしようも出来ない許して欲しい。
結果から言うと、ニトクリスさんのチョコはひと味もふた味も違う、特別なチョコに変貌を遂げた。
具体的に言うとメジェド様と化していて、何となく人間からスフィンクスアウラードになったおれは親近感を覚えてしまう。
綺麗なお皿の上に並ぶ小さなメジェド様の一体と目が合う。虚無。
いややっぱり親近感は無いな。
大丈夫ニトクリスさん、マスターは喜んでくれるから。その前に困惑はするだろうけど。
頑張れニトクリスさん、頑張れマスター。
満足気なオジマンディアスさんの指が、再びおれの顎下を撫でる。ゴロゴロ喉を鳴らすしかできないおれは、ただただ心の中でエールを送るのであった。