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ルベン・ヴィクトリアーノには片割れがいる。
双子の弟で、名前をナマエ・ヴィクトリアーノ。
確かにルベンとナマエは双子ではあったが、ルベンはナマエにあまり興味も関心なかった。
強いて言うならば、ナマエはいつも何かに怯えていて、それを多少鬱陶しいと思っていたくらいで、ルベンにとって双子の弟とはそれくらいの認識である。
それよりも姉であり唯一の理解者であるラウラの方が、ルベンにとっては大切な存在であった。ラウラは何かとナマエのことを気にかけていたようだったが、彼はラウラにすら自分のことを話すことはなかった。
けれどラウラにすら心を開かなかったナマエが、時折自分の隣にやって来て静かに本を読むことあって、ルベンはその時間が嫌いではなかった。
「ルベンは、ラウラのことが大切?」
久々に投げかけられたナマエの言葉に驚きながらも頷く。それがなんの意図を持ってして発せられたのかは分からないが、ラウラが大切な存在ということは間違いなかった。
ルベンの反応に、ナマエが笑みを浮かべる。その心底安心したような笑みに思わず目を見開く。それはルベンが初めて見たナマエの笑みだったからだ。そしてそれは同時に、ルベンが最後に見たナマエ笑みでもあった。
パチパチと火の爆ぜる音。
狂ったように一面に咲き誇る向日葵。
腰を抜かし声にならない声で何かを喚く男達。
ラウラの悲鳴。
あそこで燃えているのは何だ
今、炎に包まれ、燃えて、いる、の、は
暗転
断続的な機械音と、真っ白な壁、真っ白なベッドの上で眠る、赤く爛れた肌の双子の弟。
20年前、復讐だなんだと宣って小屋に火をつけようとした男達から、ルベンとラウラを守ったのはナマエだった。
全身に火傷をおいながらも、何とか命を繋いだナマエは、それでも目覚めることはない。
火傷の影響で凹凸のある頬を撫でる。
ルベンは命の危険を冒してまで、ナマエが自分たちを助けたのか分からなかった。
例えばルベンがラウラを想うように、ナマエもルベンやラウラのことを心の底では想っていたのだろうか。
けれどナマエは眠ったまま、何も答えない。
ナマエは一体何に怯え続けていたのだろう。
何故あの問いを投げかけ、そして笑っただろう。
ルベンは何も知らなかった。双子であったはずなのに好きなものも嫌いなものでさえ、何も知らない。
自分の唯一はラウラであったはずなのに、ナマエが眠りについたあの日から、ぽっかりと何かが欠けたままでいる。
「お前が眠ったままでいるのなら、私が直接会いに行こう」
その為の手段を、自分は得ようとしているのだから。
バスタブのような入れ物が円形上に並ぶ巨大な機会。意識を共有し新たな世界を作り上げる装置、「stem」
眠ったままのナマエの意識の世界へ行くために、ルベンが作り上げた物。
「もうすぐだ、もうすぐ完成する」
ナマエに会えたら、まずは何を話そうか。
最終的には現実世界での目覚めを促し、目覚めたら2人でラウラに会いに行こう。
あぁ、でもその前に、暫くは2人で意識の世界ですごそう。私たちは双子なのだから。失った時間を埋めなければ。
ルベンはうっそりと笑みを浮かべた。