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────エウリュディケ荘園の地下には、それはそれは執着心の強いモグラがいるから、見つかってはいけないよ。
それは誰が言ったか分からない、まことしやかに囁かれる噂話。
「好きだよナマエ」
ドロリとした声音で愛を囁きながら、男はするりと頬を撫でた。
男の名はノートン・キャンベル。このエウリュディケ荘園のモグラである。
地下に囚われた男、ナマエは何も答えない。代わりに薄い水の膜が張られた瞳でノートンを睨む。
ここはエウリュディケ荘園の地下にある、誰も知らない秘密の部屋。
モグラは酷く地上を嫌っていた。妬んでいた。
自分の顔の半分は、醜いケロイドに覆われている。
地上の明るさはその醜さを浮き彫りにさせる。
しかしモグラは地下から覗いた地上で、太陽を見つけた。
色とりどりの玉を操るアマツバメ、その曲芸に満面の笑みで賞賛を送るその姿に、ひどく焦がれた。
あれを手に入れたい。
あれを自分のものにしたい。
欲した物は手に入れる、例えどんな手を使っても。
そうして手に入れた太陽は、あの満面の笑みも、賞賛も、好意も、ノートンには決して向けなかった。
けれどそれでもよかった。だってこの瞳には、今自分しか写っていない。この狭い地下で2人きり。
心を奪うのはこれからでいい。ゆっくり、じっくり、貴方には自分しかいないのだと教え込めば良いのだから。
「地上になんて帰してやらない。ツバメになんて渡さない」
この暗い地下で、ずっと2人きり。
ポロリポロリと、涙がナマエの頬を伝っていく様を、モグラは恍惚と見つめる。
哀れな男の泣き声は、モグラに塞がれて空に届く前に消えた。
「ナマエ、待っててね。
絶対見つけて見せるから」
玉を爆弾に変えて、曲芸を攻撃の手段に変えて。
アマツバメは空をかける。消えてしまった太陽を、愛する人を見つけるために