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「トールってさぁ、いつシフ姉さんに告白すんだろうねぇ」
「は?それ本気で言ってる?」
麗らかな午後の日差しの中。男の発した言葉にロキはドン引きした。
男の名前はナマエ、女神シフの弟である。
ナマエは何故だか自身の姉であるシフとトールが結ばれるものと信じて疑わないのだが、真実は違う。
トールはナマエが好きだ。
男同志だろうがなんだろうが、LIKEではなくLOVE。
オーディンやロキはもちろんながら、周りの神々や天使達にとっても周知の事実で、それもそのはずトールはナマエの周りに下心を持って近づいてきた者は男女問わず威嚇しこれでもかと牽制をしているし、戦い以外は興味がないと無表情が常のくせにナマエの前ではトロリと瞳を歪ませて微笑みを向けているのだ。
これで気付かない方がバカなのだが、当の本人のナマエが気付いていないというのは一体全体どういう事なのか。
あまりの鈍感っぷりにいっそトールが哀れに思えてくる。
「まぁ、面白いから黙っとくけどさ、そのうちペロッと食べられちゃうんじゃない?」
「え、何、巨人の話?」
いつぞやに巨人が攻め入って来た事を思い出して、顔を顰めるナマエをやっぱりバカだなぁとその丸っこい頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。
ほんと、トールはこの子のどこが好きになったんだろう。なんて考える。
戦闘狂でトールの求める強者とは真逆の、むしろ弱い部類であろうナマエ。
顔は可愛い方ではあるが女性らしい顔立ちかといえばそういう訳でもなく、しいて言うなら姉のシフに似て綺麗な金色の髪というくらいだろうか。
「後はバカな子ほど可愛いとか」
なんのこっちゃと首を傾げるナマエに笑いかける。
その間抜けな顔にふと、ロキの中で悪戯心が芽生えて、手を伸ばす。
けれどその手がナマエに届くことは無い。
「ロキ」
触れようとした手はいつの間に来たのか、トールに掴まれた。
まぁトールの事だからナマエとロキが話始めた段階でいつでも対処出来る距離に居たのだろうが。
「わ、トールいつの間に来たの!?雷神パワー?」
やっぱりそんな事にも気付かないのは驚いたように声を上げるナマエだけ。
ロキは降参だと言う様に手を上げてヘラリと笑った。
「やぁ、トール。そんなに怖い顔しないでよ、ナマエがあんまりに鈍感でトールが可哀想だから、ちょっと進展させてあげよっかなって親切心だよ」
「余計なお世話だ」
そう言ってトールがナマエの身体を抱き上げる。
「それに、急く必要もない」
そのままスタスタと歩き出したトールに、状況の掴めていないナマエだけが何事かとわちゃわちゃ言っているようだが、ロキは何も言わずにヒラヒラと手を振ってやった。
「あ〜あ、ナマエあれじゃ逃げられないだろうなぁ」
なんて、見えなくなった後ろ姿に呟く。
その声はどこか楽しげだった。