それはn回目の
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衛宮士郎が好きだ。
出会った日から、あの日声をかけられた瞬間から、士郎が好きで、溢れる想いをそのまま彼に伝えては、毎回律儀に振られていた。
高校を卒業して、海外に行くという彼の後を追いかけて、正義の味方になりたいと、なろうとする彼の支えに俺はなりたくて、せめて足を引っ張らないようにと必死に自分に出来ることを探して、身に付けた。
「ここはお前のいるべき場所じゃない」
「日本に帰るべきだ」
「ナマエ」
何度もそう口にする士郎に、その度君が好きだと言って笑って見せる。そうすると、士郎はぐっと眉根を寄せて、だけどどこか安堵したような、ちぐはぐな顔をする。それも本当は俺の都合のいい思い込みなのかもしれないけど。
それでも士郎が好きで、1人にしたくはなくてずっと自分の我儘を押し通してる。
もう何年間も1人の人を好きで、告白し続けていると言うと、周りは奇異や好奇の目を向けてこちらを見るということに気がついたのは、いつだったか。
何かを、誰かを、ずっと好きでい続けるということは、そんなにも変な事なのだろうか。
例えばそれは食べ物だったり、曲だったり、物語だったり。
出会った瞬間から大切で、特別で、今でもずっと好きなままのものが誰にだってひとつはあるだろうに。俺にとってそれが衛宮士郎という人だったというだけなのだ。
「好きだよ、士郎!」
「……君も、懲りないな」
いつもの告白、いつもの返事。
君の髪の色はいつしか抜け落ちて白髪になってしまったけれど、肌の色がいつの間にか浅黒くなってしまっていても、困っている人を放って置けずに差し伸べる手が、笑った時の幼い顔が、俺の好きになった君と何一つ変わらないから、やっぱり俺は士郎が好きなままなのだ。
士郎は俺に血なまぐさい所を見て欲しくないと、怪我をしてほしくないと、俺を出来るだけ戦場から遠ざける。
だから今日も、テロリストのアジトの鎮圧に向かった士郎の背中に気を配りながら、できるだけ邪魔にならないよう身を潜めて、人質の誘導や怪我人の手当をしていた。けれどふと、士郎の斜め後ろ、ちょうど士郎の視界から外れた位置にいた男の1人が血を流しながらも銃を構えているのが見えて、何より先に体が動いていた。
パンッと乾いた銃声。
腹部に埋まって破裂した弾丸、そこから広がる熱。
「ナマエっ!」
そんな顔、させたいわけじゃなかった。
それでも歪む顔が、流れる涙が、その全てが俺の為であるということがちょっぴり嬉しいのだと言ったら、軽蔑するだろうか。
痛いくらいに、士郎が俺の体を抱きしめて必死に名前を叫んでいる。
どうにか傷口を抑えようとしてくれているけれど、それでも流れる血は止まらない。
終ぞ良い返事を貰えたことはなかったけれど、それでも好きな人に好きだと伝えられ続けたことが、好きな人の隣を歩けたことが、好きな人の傍で終われたことが、何よりの幸福で、良い人生だったと言える。
あぁ、でも欲を言うならもっと君の隣を歩いていたかったし、しわくちゃのお爺さんになるまで生きて、笑って君を見送りたかった。
それに、叶うなら、1度だけでいいから、好きだって言って欲しかった、なんて
ねぇ
好きだよ、しろう
その言葉は一体、何度目の告白だったんだろう