それはn回目の
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カフェの外壁に張られた可愛らしい張り紙の前に立ち止まる。
ナマエは甘いものが好きだし、衛宮士郎のことも好きだ。
だからそれを目にした時、ナマエがとる行動はひとつしかなかった。
「お願い士郎ー!俺と恋人になってカップル限定パフェ食べに行こうよーー!!」
「恋人にはならないけど、普通のパフェなら食べに行ってもいいぞ」
トントンとその日の晩御飯を作っている途中であった士郎は、背後でいつも通りなナマエにやっぱりいつも通りの返事をする。
そのままいつも通りに終わるはずだった会話に加わる、新たな声。
「それなら私とカップル限定パフェを食べに行くか」
「わっ、アーチャーさんいつの間に!?」
タァンッ
思わず力んだせいで小気味のいい包丁の音がズレる。それに気づいたのか士郎が振り向くとアーチャーもこちらを見てフンと鼻で笑っていた。
士郎の頬がひくりと引き攣る。
「いやでも、アーチャーさんに俺とカップルのふりをしてもらうのは、ちょっと申し訳ないといいますか……」
出会ってひと月も経っていないような年上の男性に、彼氏のふりをしてもらうのはさすがのナマエも気が引けるのだ。
けれどそんなナマエに対してアーチャーは、トロリとした甘やかな笑みを浮かべる。
「何、気にしないでくれ。
君はお目当てのパフェが食べられる、私は君の彼氏になれて一緒にデートが出来る。
お互いの利害は一致しているはずだ」
「本当の彼氏じゃなくて、彼氏の"ふり"だけどな」
フンと鼻で笑った士郎をアーチャーはギロリと睨みつけた。
「ナマエの事をフッておいて、うだうだと横槍をいれないで欲しいのだがね。女々しいにも程がある」
「なっ!横槍入れてきたのはお前の方だろ!
それに俺は普通のパフェなら食べに行くって言ったんだ」
ぎゃいぎゃいと続くやりとりに、話を持ちかけたはずのナマエは完全に蚊帳の外で、何故こんな展開に?と1人頭を抱えていた。
「「ナマエ!」」
「は、はい!」
合わさった声に2人はギッと睨み合う。
「今度の休み、パフェ食べに行こう!」
「今度の休み、カップル限定パフェを食べに行こう!」
「わ、わーい。ナマエくんパフェ食べに行く〜」
告白されている男と、告白したりされたりしている男と、告白している男。
改めてみると頭を抱える組み合わせで突如決定した休日パフェデート(デートではない)
ナマエは考える、これは喜んでいいのか否か。
「私達のデートの邪魔を、しないでくれないか?」
「デートじゃないだろ!」
うーん、たぶん喜んでいいだろう!
好きになった人に何度フラれようが一直線に好きだと言い続けるナマエは、ちょっと、いやだいぶ人より楽観的だった。
その日、間桐桜とショッピングを楽しんでいた遠坂凛は見た。
カフェに居る、見慣れた3人組。
1人はニコニコと上機嫌でパフェを頬張り、後の2人はパフェを頬張っている男の世話を焼きながら、器用に牽制し合っている。
そこだけが異質な昼ドラ空間だった。
「姉さん?どうかしましたか」
こっそりあの3人組を観察するのも面白そうだと凛の中の悪魔が囁いたが、今はそれより桜とのショッピングの方が優先だ。
「んーん、何でもないわ!」
それに何より凛だって、まだ馬に蹴られたくはないのだ。