運命
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ナマエは今、拘束されている。
しかもそれは鎖とか、縄とか、魔術とかそんなちゃちなレベルのものでは無い。
スラリと細い、それでいて適度に筋肉の着いた白い手がナマエの体をガッツリと抱き締めて離さない。いやもうなんでこんなことになっているのか、ナマエには理解ができなかった。
「あの〜……これは一体全体どういう事なんでしょうかねぇ……」
顔を上げれば、その人と目が合った。
「ねぇ、カルナさん」
ナマエを拘束、もとい抱き締めていたのは、インドの大英雄カルナであった。
「お前が好きだからだが」
そう言ってこてりと首を傾げるカルナに、ナマエの目は死んだ。
今日は久々に種火狩りも無く素材集めも無い、人理修復中の貴重な休日。
サーヴァントに休みは必要なくとも、やはり嬉しいもので今日は1人自室でゆっくりしようと思っていたのだ。思っていたはずなのに、「少しいいか」と訪ねてきたカルナを部屋に入れてからおかしくなったのだ。
あれよあれよという間に何故か抱き締められ、気が付けばカルナの膝の上でベッドに腰掛けていた。訳が分からない。
「え、あの、カルナさん?好きっていうのは……えっと……それは仲間として、友人としての好き……ですよね?」
「いや、恋愛感情としてお前が好きだ」
恐る恐る尋ねた問いは、できればそうであってほしいという願望ごと一瞬で砕け散った。
「先日、対戦ゲームをしているというガネーシャを迎えに刑部姫の部屋まで行ったのだが」
刑部姫の登場に、ナマエは一瞬で真顔になる。
その顔やまさしくチベットスナギツネ。あまりの完成度にこの場にマスターか黒髭あたりがいたら大笑いものであったであろう。
「そこで俺は1冊の本に出会った。そう、びーえる漫画と」
この時ナマエに電撃走る。
いや嘘でしょなんてもの読ませてるんだあの引きこもり姫は
けれど清く正しくオタクであった刑部姫が、そんな軽率に一般人にBL漫画を読ませるわけがない。
対戦ゲームに熱くなっていた刑部姫とガネーシャ。ガネーシャを迎えに来ていたカルナに2人は今いい所だから待っていてくれと頼んだのだ。そして運の悪いことに、暇を持て余してしまったカルナの目に、何故かたまたま偶然運悪く、BL漫画が写り、そして手に取ってしまったのだ。
刑部姫の予定では、部屋に来るのはガネーシャだけで、そのガネーシャもオタク知識に寛容であった。だからこそ刑部姫は油断していたのだ。その油断がカルナがBL漫画を読んでしまうという自体になってしまったのだ。
これが今回の事件の原因であった。刑部姫は反省して欲しい。
「俺は、今まで諦めていた。伝えるつもりはなかった。俺達は男同士で、サーヴァントだからだと。
けれどあの漫画の登場実物達は違った。多くの試練を乗り越え、そして時にぶつかり、結ばれた。俺は彼らに勇気を貰った」
いつの間にやらカルナと向かい合う形になる。
その顔は珍しく緊張を帯びていて、こちらまでそれが伝わり思わず姿勢を正した。
「好きだ」
紡がれた3文字は、どこまでも真剣で、真っ直ぐナマエの心の柔い部分に伝わった。
仲間のままでいよう、今は人理修復中だ、エトセトラ……
そう、適当に理由をつけて断るのは簡単だ。
けれどカルナの目が、声が、ナマエに愛を伝えてくるものだから、どうにもこうにも出来なくなってしまって
「ま、まずは交換日記からでお願いします……」
そう答えた時のカルナの顔が、今まで見たことがないほどに輝いていたので、とりあえず交換日記用のノートでも探すかと思案した。
あとほんと、刑部姫は許さない。