運命
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そいつは変わった奴だった。
円卓の騎士であるモードレッドと、一般騎士であるナマエが出会ったのはとある一つの戦場で、アーサー王に良いところを見せようと、一人先行して敵陣に突っ込んで行ったモードレッドを諌めたのがナマエだった。
それからだ、ナマエはモードレッドを見かけては、また無理はしていないか。怪我はしていないか。きちんと食事をしているか。等とことある事にモードレッドに言葉をかけていた。
それに対しモードレッドは最初、無視をしたり、適当にあしらったりしていた。時には怒鳴った時もあった。
それでもナマエは、モードレッドを心配し言葉をかけることを止めなかった。
そうしてモードレッド自身も、いつしか彼の言葉に耳を傾けるようになっていった。
ある日聞いたことがある。
何故こんなにも自分を気にかけるのだと。
その問いに、ナマエはどこに困ったように、それでいて幸せそうに笑みを浮かべ答えた。
好きな人を気にかけるのは、当たり前のことですから
その言葉にモードレッドは驚愕に目を見開いた。自分が好意を向けられるようなことをした覚えなど全くない、その逆ならば心当たりが多いにあるが。
突然の告白を聞いたその日から、モードレッドはナマエを避けた。
どうしたらいいのか分からないし、どこか会うのが気まずかったのだ。
けれど会わないなら会わないで、謎の苛立ちやモヤモヤとした感情が生まれては、胸中で嫌に存在感を主張させていた。
そうしてモードレッドはその不快感を抱えたまま、次の戦場へと出陣する事になった。
だからだろうか、どこか隙が出来てしまっていたのかもしれない。
「モードレッドッッ!!!」
モードレッドの背後で振りかぶられたその凶刃は、モードレッドを貫くことはなく、けれど変わりにナマエの体を斬り裂いた。
噴き上がる真っ赤な飛沫。ぐらりと傾く体がやけにスローモーションに見えた。
モードレッドはすぐさま敵を斬り伏せると、地に伏したナマエの肩を抱き起こす。
「待ってろ!今すぐ医療班に……」
最後まで言葉を紡ぐことが出来なかった。
ナマエが、あまりにも穏やかに微笑むから。
「モードレッドが……ぶじで、よかった」
何も良くなんてない。
変わりにお前が傷ついていたら、何の意味もないだろう。
そう言いたいのに、ナマエから溢れる血液が、消えていく命が恐ろしくて、口からはただ無意味に息が漏れるだけで、何一つ言葉が出てこない。
「大好きだよ、モードレッド」
どうか幸せに
どこまでも優しく、どこまでも残酷な言葉を残して、彼はその命を終えた。
戦場に悲痛なまでの咆哮が響く。
モードレッドは大切な何かを喪った。
その大切なものがいったい何だったのか、モードレッドがそれを知るすべは、もう無い。