運命
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怒鳴り声が聞こえる。
それも一人や二人ではない、大勢の声。革命を叫ぶフランス国民の声だ。
服の袖が引っ張られて振り返れば、青ざめた顔で震える、麗しの元フランス王妃とその子供達。
私はどうにか彼女を安心させたくて、出来うる限りの笑みを浮かべた。
「大丈夫、マリー様。私が民をひきつけます。その間に貴女方は、馬車でオーストリアのお兄様の元に向かってください」
私の提案に、マリーは更に顔を青ざめさせて叫んだ。
「だめよそんな事!貴女も一緒に逃げましょう?お願いよ」
今にも泣き出しそうな彼女に、それでも私は首を縦にふることはしなかった。
「マリー聞いて、私の大切な友達。私の足が速いこと、貴女なら知ってるでしょ。喧嘩だって、それなりに強いし。アマデウスの顔を平手打ちして、真っ赤に腫らしてやったの覚えてる?」
こくりこくりと頷くマリーに、私は小さく笑って彼女を見つめた。
「信じて、マリー。きっと後から追いついてみせ
るから。私にあなた達を守らせて」
その言葉に、マリーは漸く約束よと頷いた。
許してね、マリー。貴女との約束を守れない私を。
最後まで私の身を案じていたマリーと子供達を乗せた馬車は、オーストリアを目指し走り去っていく。
私をそれを確認して、用意していた衣装に袖を通した。
マリーには可愛さも麗しさも劣るけど、それでも遠目からしか彼女を見たことの無い民草ならば、誤魔化せるだろう。
「居たぞ!マリーアントワネットだ!!」
私の持ち得る全てで、騙すのだ。
どうか幸せに、私の身分違いの友達よ。
そうして私の人生は幕を下ろした。
下ろしたはずだった。
気が付けば私はフランス、オルレアンにいた。
サーヴァントととして。
私は、サーヴァントになれるような逸話も偉業も成し遂げてなどいない。
そんな私が何故サーヴァントとして現界しているのか。
それはきっと、この頭に響く声が原因だ。
フランス王家の復活を望む私利私欲に塗れた声が、幾重にも頭に響き、今にも割れてしまいそうなほどの頭痛を引き起こしている。
彼らの寄せ集めの器として、私が選ばれたのだろう。全く迷惑この上ない話だった。
それから暫くオルレアンを彷徨い歩いていると、1人の魔術師と出会った。
カルデアという機関の、人類最後のマスターだと言う。
何だか放っておけないような、そんな子だった。
その子と私の間には、か細いながらも確かに縁ができていて、カルデアに呼ばれる事となるのだが
そのカルデアで、愛しの王妃と再開して泣きながら怒られたり、かつての友人の音楽家に嫌味を言われたり、白百合の騎士に叱られたり、私を処刑した医者に号泣されたり、それでも結局皆に、笑って抱きしめられることになることは、私がまだ知らないもう少し先の話。