Grand Order
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ジャックことジャック・ザ・リッパーはマスターを「お母さん」と呼ぶ。彼女は母の温もりも、家族も知らない。
今日も今日とて幼い手に刃を持ち、鮮やかに敵を切り裂き戦闘から帰還した彼女を出迎えたのは、優しげな微笑みを浮かべたセイバー。
「リアム!」
小走りに駆け寄ったジャックの頭を、リアムの少し筋張った暖かな手が優しく撫でる。
「おかえり、ジャック。お疲れ様でした。」
ジャックは彼に頭を撫でてもらうのがいっとう好きだった。
「ただいまリアム」
マスターがお母さんなら、リアムはお兄ちゃんかもしれない。
今度お兄ちゃんと呼んでみようかと考えて、ジャックはこっそりと笑った。
・
カルデアの談話室。
目の前の光景に、アンデルセンはまたかとため息をついた。
大人4人は楽に座れるであろうソファ。そのソファにリアムを中心に、ジャック、ナーサリーライム、ジャンヌオルタサンタリリィ、バニヤンの五人が座っていた。
リアムの手には閉じられた絵本。幼いサーヴァント達の瞳も閉じられ、本を読む声の代わりに穏やかな寝息が聞こえていた。
「またこいつらは寝てしまったのか、仕方の無い奴らだ。」
フンッと鼻を鳴らす彼の発言自体は棘があるものの、その声音はどこか穏やかでリアムはクスリと微笑んだ。
アンデルセンはムッと顔を顰めると談話室から出ていってしまった。不快にさせてしまっただろうかと考えたが、暫くして戻ってきたアンデルセンが両手に抱えた物を見て、すぐに杞憂だと気がついた。
「サーヴァントは風邪など引かんがな。まぁ、無いよりはいいだろう。」
ふわりと掛けられたクリーム色のタオルケット。そしてリアムに渡されたのはのは、分厚い原稿用紙の束。
「どうせこいつらが起きるまで、動かんつもりだろう。こんなものでも暇つぶし程度にはなるはずだ。」
それっきり1人別のソファに腰掛けて、自分が他に持ち込んだ文庫本を読み始めた彼の耳が、ほんのり赤い事に気が付かないふりをして。
リアムは礼を言って、偉大な童話作家の新作に目を落としたのだ。
・
戦闘終わり、最後の一体を仕留めたアーラシュの頭に、ぽふりと置かれたリアムの手。
「俺、もう子供って歳じゃあねぇんだけど。頭撫でられたのなんて久々だな。」
快活に笑うアーラシュに、リアムはハッと手を離した。
「すいません、最近幼いサーヴァント達と戦闘に行くことが多かったので。」
つい、と苦笑するリアムの頭に、今度はアーラシュの手が乗せられると、そのままわしゃわしゃとリアムの頭を撫で始めた。
「お前さんも、もう少し撫でてくれてもいいんだぜ。」
悪戯っ子の様に笑うペルシャの大英雄の急なことに、始めはキョトンとしたリアムだったが、すぐに笑顔を浮かべて同じように彼の頭に手を伸ばした。
頭を撫で合う2人に、太陽のファラオと人類最後のマスターが突撃してくるまであと少し。