Grand Order
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ストーム・ボーダー、そのシュミレーター内は現在、突如として発生した異常により草木生い茂る異界と化していた。
マスター達の行く手を阻む壁のように生えた木は異界らしく切っても燃やしても早々に再生してしまい攻略する術はただ1つ、「蹴る」というなんともシンプルなその1点のみ。
けれどその唯一の攻撃手段でさえも、一時的にサーヴァント達から魔力を奪うもので、サーヴァント総出でこの謎深い森を踏破、探索していくことになったという訳である。
そんな異界の森の更にその巨木の中、魔力を喪失したサーヴァント達の休憩地点の1つとなった色鮮やかな花畑。
ふわりと柔らかに香る花の匂いにリアムは頬を緩めた。
少し前まではネロと張角が花の色は赤だ黄色だと魔術で張り合っていたが、今はそれもなくただ穏やかな雰囲気と笑い声だけが流れている。
ランサーのメドゥーサとナーサリーライムやアビゲイルら子供系サーヴァント達が楽しげに花冠を作っては互いの頭に乗せてきゃらきゃらと笑っているのを視界に捉えてリアムはその微笑ましさに目を細めた。
それと同時に過ぎったのは遠い昔、まだ自分が王になる前の家族と暮らしていた子供だった頃。
妹に強請られて花冠を作った事があった。
ふと戯れに花を摘む。
遠い過去の記憶ではあったが存外に体は覚えていたらしく、当時より少しぎこちなさはあるものの摘んだ花を温かな記憶をなぞるように編んでいく。
赤、白、黄色、簡単には解けないように、けれど力を入れすぎないように緑を編む。
どれ程そうして花を編んでいたのだろうか。そう長くは経っていないだろうが。
出来上がった色鮮やかな花冠。
大人が被るには小さい、丁度幼い子供の頭にぴったりと乗るであろう大きさの花冠。もう渡す相手もいないのに。完成してからその事に気が付いて思わず苦笑が漏れてしまう。
「それ、子供たちから貰ったんですか」
ふ、とかけられた声にリアムは顔を上げた。
彼女はカーマ。インド神話の愛の神。
本来男神であるカーマだが今は依代となった人間の影響で幼い少女の姿をしていた。
「いえ、私が編んだものです」
リアムの答えにカーマは、器用ですね、と特段興味なさげに呟いた。
インド神話の神であるカーマと西洋の国の王であるリアムとでは関わりがないように見えて、意外にも世間話をするくらいには良好な仲だった。
と言っても、あのカーマが何もなしに自分から声をかけるという時点で中々に珍しくそれだけレアな関係なのだが。
「……良かったら、貰ってはくれませんか。つい編んでしまったのですが、完成してから渡す相手もいない事に気が付いてしまって」
そう困ったように眉を下げたリアムにカーマは、はぁ?と顔を顰め何か言おうとして口を閉ざした。その代わりに深いため息を1つ吐くとむすりと、以下にもしょうがなくといった風に手を差し出した。
「ま、いいですけど。神への献上品ということで許します」
それにリアムはありがとうございます、と笑みを浮かべ花冠を手渡した。
子供の姿のカーマの頭に丁度誂えたかのように収まった花冠。
幼い少女の、カーマの姿に一瞬妹の姿が重なって見えて、リアムは眩しいものを見るように思わず目を細めた。
そんなリアムの様子にカーマは本日2度目のため息を吐くと、隣へストンと腰を下ろした。
「どうせここに座っているだけで暇なんでしょう。だったら次はきちんと私の為の花冠を作ってください」
ムスッとした顔でそう傲慢ともとれる態度で言い放つ。
けれどそんな少女にリアムは緩々と頬を緩め頷いた。
「ええ、是非」
今度はかつての過去ではなく、今目の前にいる少女の姿をした神の為に、リアムは薄桃色の花に手を伸ばした。