Grand Order
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カルデアのサーヴァントである酒呑童子。
彼女の宝具により作られたのは、そびえ立つ巨大な塔。驚くことに百階まであるというその塔を、節分大将ことアーチャーインフェルノとマスターは、最上階にて待ち受ける酒呑童子を目指し、塔を駆け上っていた。
ただし、問題が一つ。
サーヴァントの疲労。
普通、サーヴァントは疲労を感じない。しかし、酒呑童子の宝具『神便鬼毒酒』によって作られた影響か、登る度に酔っていき、それが疲労へと繋がって言っているようなのだ。
そこで節分大将の彼女が生み出した打開策。それこそがそう、
「露天風呂、ですか」
霊脈の上にあるそこはサーヴァントの披露までも回復してしまう、特殊な露天風呂である。
先程まで節分大将とマスター、他のメンバーと共に塔を登っていたセイバーリアムは、疲労を癒すためにこの露天風呂に来ていた。
「よぉ、お疲れさん」
先に湯に浸かっていたのは、先程まで出陣していたランサーのクー・フーリンだ。
「貴方の方こそ、お疲れ様です。隣いいですか?」
「おう、かまわねぇぜ」
ニッカリと笑顔を浮かべたクー・フーリンの隣にゆっくりと浸かる。少し熱いくらいの湯に、じんわりと筋肉がほぐれていくのを感じながら、リアムは ほう と息をつく。
「これは良いですね。温かい。」
目を閉じて力を抜くその姿に、クー・フーリンはハハッと笑う。
「お前さんがそんな力抜くなんて珍しいな。」
リアムは、そうですか?と首を傾げる。
「あぁ。カルデアでも、戦いが無い時は力抜いちゃあいるが、今のお前はなんつーかな……溶けてる、って言えばいいのか。そんな感じだな。」
確かにお湯に浸かるリアムは、どこかふにゃふにゃと溶けている。
姿勢を正そうと思考したリアムに、クー・フーリンはそのままでいいさ。と普段は真面目で、自分とはまた違った穏やかな兄気質の彼の珍しい姿を眺めた。
「ふふっ、そんなに見られたら困ります。」
照れなのか、お湯で温まったせいなのか、ほんのりと赤みを帯びた顔で笑うリアムに、何でもねぇよ と少し乱暴に頭を撫でる。普段頭は撫でる側のリアムだが、上機嫌にその手を受け入れている。
普段は素直に甘やかされる事の無い彼を、こんな時くらい甘やかしてやろうか等と考えた耳元で、この場に相応しくないガチャリという不穏な音と、ピリピリと自分を突き刺す敵意。
「その手を退けろ、光の御子。」
低い声に、浅黒い肌と真逆の白髪。だが自分のよく知る姿とは違う冷たい雰囲気。
クー・フーリンは撫でる手を止めるが、退けるまではしない。この男に素直に従うのが癪だった。変わりに先程までの笑みを潜めて睨みつける。
「よぉ、弓兵のオルタ。」
銃を向ける男。アーチャーエミヤの反転した姿。エミヤ・オルタもまた、クー・フーリンを睨みつける。
「貴方も浸かりに来たのですか、エミヤオルタ」
一触即発な雰囲気を打ち破ったのは、相変わらずふにゃふにゃとしたリアムだった。
パッと敵意も投影した銃も消したエミヤオルタに、クー・フーリンは思わず舌打ちをした。
崩れて多くを忘れたこのサーヴァントは、それでもリアムに執着心のような、迷子の子供が母を見つけた様な、恋心と呼ぶには歪んでしまっている、そんな複雑なものを抱いているのだから厄介だった。
「って、何蹴ってんだテメェは!!」
そんなクー・フーリンの思考など知った事かと言わんばかりに、エミヤオルタはげしげしと蹴りを入れる。ほにゃりと目を閉じてくつろぎ始めたリアムに見られないことをいいことにだ。
「そこをどけ、ランサー。邪魔だ。」
無理矢理リアムの隣に入ろうとするエミヤオルタの蹴りに、クー・フーリンは悪態をつきながらも隣を譲る。
「皆で同じ湯に浸かるというのは、良いものですねぇ」
一人のんびりとしたままのリアムに、このオルタをどうにかしろと抗議の声を上げようとしたクー・フーリンに、一際強く蹴りを入れるエミヤオルタ。
「ってぇ!止めろテメェ!!」
「吠えるな、ランサー。狗が湯で寛ぐのは無理か」
ハッと鼻で笑って皮肉を放つエミヤオルタに、強い怒りを覚えた。何故休息に来た露天風呂で、こんな目に合わなければいけないのか。さっきまでの2人穏やかな空間はどこにいったのか。
「狗って言うな!!!!やっぱどの姿でもこの弓兵気に食わねぇ!!!!!!!!」
そんなクー・フーリンの叫びが、露天風呂に木霊した。
ここにアーチャーとアサシンのエミヤが加わり、エミヤ大集合となるまで後……