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光の届かない、薄暗い地下の蔵。
不気味なその闇の中、蠢くは無数の蟲、蟲、蟲。その蟲達のいる中心部に少女はいた。
少女のいまだ未熟な体を覆い尽くすグロテスクな蟲の姿は、酷くアンバランスに映る。
犯し尽くされた体は変質し、かつての家族と同じだった髪も瞳も全て変わってしまった。
痛みの中、救いを求める手は誰に取られることも無く。
助けを求めるべき相手が誰かも分からない。
────────……!!
声が聞こえる。
蠢く蟲の音に紛れて微かに聞こえたそれに、少女に意識が僅かに揺れる。
───────さ……く……んッ!
それは聞き慣れた声。
その声が、確かに桜の耳に届く。
「桜ちゃんッッ!!!」
破壊音、続いて射し込む光に蟲がざわめく。
「助けに来たよ、桜ちゃん!」
こちらに伸ばされた手。
それがいつかの父の姿と一瞬重なって、けれど光に照らされたその顔は父ではなくて。
あぁ、私はその手を取ってもいいのだろうか。
助けを求めても、いいのだろうか。
差し伸べられた手に向かって、ほんの少し上げた手が思い切り蟲の中から引っ張りあげられて強く抱き締められる。いっそ痛いくらいに。
だけど不思議と、その痛みが嫌ではなくて。
「遅くなってごめんね、桜ちゃん」
ぼろぼろと流れる涙が、桜の頬にまで伝う。
そうしてその日、間桐桜はとうとう薄暗い蟲蔵の中から救われたのだった。