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「貴方の殺意は、貴方だけのものです。
貴方が貴方の殺意で殺すことを決め、そして行動しているのです。
自分の殺意の言い訳に、他人を、ましてや大切な人を使うのは、相手も自分もただ傷つけてしまうだけですから」
片耳につけたイヤフォンから流れる音声に、切嗣ははぁ、と息を吐く。
「随分と甘いじゃないか」
「そうでしょうか、あれでも厳しくしたつもりでしたが……」
誰もいない部屋で口にした言葉が独り言になることはなかった。
切嗣の言葉を拾ったのは、先程まで間桐雁夜と話していたリアムの姿がそこにはあった。
「敵のマスターを監視もせずに放置するなんてどういうつもりだい、セイバー」
「私がわざわざ監視せずとも、貴方がそれで見ているのでしょう」
リアムの視線の先、小型端末に映るそれはベッドの上で何かを思考する雁夜の姿。
抜かりのない己がマスターのことだ、隠しカメラの1つや2つ、部屋に忍ばせて置いているだろうことは分かっていたし、そうでなければ敵のマスターをああして1人で部屋に放置しておくこともしない。
それに、とリアムは続ける。
「間桐雁夜が本当にあの少女のことを思っているのなら、ここでバーサーカーを呼び出すようなまねはしないでしょう」
そう言って笑うリアムに、切嗣はぐっと眉根を寄せる。
確証も何も無い行動だが、実際に雁夜がバーサーカーを呼び出すなり、何か魔術を行使するような素振りは見せていない。
「何より戦って分かりましたが、バーサーカーは強い。狂化が入って尚あの身のこなし……あれは相当な手練です。
真に遺憾ではありますが、今まともに剣が握れないこの状態では彼に勝つことは難しいでしょう」
「なら、戦わずに味方につけてしまった方が早い、と?」
確かにリアムの言い分にも一理あるが、この聖杯戦争において効率がいいかと言われれば、否であろう。
別にバーサーカーと戦わずとも、他のサーヴァントとの相打ち、そうでなくても体力が削れた所を不意打ちで狙うという手段もある。
それに間桐雁夜と同盟を組む、ということはこの場合、御三家である間桐に喧嘩を売るというとと同じだ。
こちらに得られる情報があったとしても、それが得策とは言いづらいだろう。
だったら今、リアムに黙って間桐雁夜を処分してしまった方が早い。雁夜自体の戦闘能力は付け焼き刃のそれでしかない。
けれどそんな切嗣の考えすら見透かすように、リアムは笑った。
「それに切嗣、人類を救う前に一足先に、幼い少女を助けるというのは、悪いとこではないでしょう」
くすりと笑ったその顔は、いつか夢見た英雄の顔と重なってしまって、とうとう切嗣は何も言えなくなってしまったのだった。