Grand Order
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────── 暗い、寒い、痛い。
寂しい、寂しい、寂しい、寂しい。
それでもその感情を、口に出すことはしなかった。
きっとそれを1度でも言ってしまえば、耐えられなくなってしまうから。
それは駄目だ。駄目なのだ。
倒れてしまったのなら最後、私は私の大切なものを、愛する人達を、守れなくなってしまうのだから。
──────ター……
──────マスター……
誰かが呼んでいる、その声で藤丸立香は目を覚ました。
「目が覚めたかい、マスター」
「……エミヤ、さん。ここは一体」
つい先程まで、立香は自室のベッドで眠っていたはずである。
けれど目覚めればそこは、冷たい床の上。キョロキロと辺りを見渡せば、どうやら何処かの城内であるようだった。
何となく覚えのある現象に、立香はまたかと思わず苦笑いを零れる。
今回はすぐ側に、アサシンのエミヤという知り合いが居たのが、せめてもの幸いと言えるだろう。
「これは、エミヤさんの夢ですか」
「いや、これは僕の中じゃない。起きたなら進もうか」
そう言うと廊下へと歩き出したエミヤの後を、慌てて追いかけた。
大体にしてこうして立香が夢としてサーヴァントの深層心理、精神世界の中に入り込んでしまった時は、大抵にしてその精神の主であるサーヴァントが共に居るのが定石だったのだが、今回は違うらしい。
別の時も他のサーヴァントが出てくることは少なからずあったので驚きはしなかったが、それならばこれは、一体誰の精神世界なのだろうか。
少し前を歩くエミヤの足取りには、迷いは感じられない。まるで目的地が分かっているような歩みだ。
「それなら一体、これは誰の夢で、どうしてエミヤさんが居るんですか」
「……悪いが、お喋りは一旦後だ」
廊下の前方、ガシャガシャと音を立ててやって来たそれは、この城内に相応しい粛清騎士達だった。剣や弓を構えるその姿からは、明らかな敵意を感じ取ることが出来る。
「エミヤさん、お願いします!」
「あぁ、了解した」
その言葉を合図に、エミヤは閃光弾で敵の目を潰すと、一気にナイフを鎧の隙間へと差し込み、確実に対処していく。
多数対1の戦闘だったが、さほど時間はかからなかった。
「戦闘終了。先へ進もう」
再び廊下を進んでいくと、エミヤが口を開く。
「さっきの話の続きだが、あんたはここをどう思う」
エミヤの言葉に、よくよく周りを観察してみれば分かったことがある。
まず第一に、豪華な見た目に反しこの廊下はどこか薄暗い。いや、廊下だけではない。城内全体が薄暗いのだ。
それに加えなんと言えばいいのか、寒々しいというか、温もりが感じられないのだ。
それもここが城だからだとか、そういう事ではないように思う。
「……えっと、何となくなんだけど、寂しいって感じました」
マスターの返答に、エミヤは否定するでもなくそうかい。と呟いた。
「僕がここに来た目的は、あんたを連れ戻しに来たのと、もうひとつ」
そこで足を止める。いつの間にか廊下は終わり、目の前には豪華な両開きの扉がひとつ。
「ここが目的地だ」
ちらりと向けられた視線に頷くと、エミヤが扉を開けた。
一際豪華に見える広い部屋。奥に置かれているのは玉座だろうか。そして、その前にポツリと佇むのは、どこか見覚えのある後ろ姿。
後ろ姿が、こちらを振り向く。
「……リアム!?」
それは自分の召喚に応じてくれた、共に戦う仲間。カルデアにおいて優しい兄のような存在。
目を見開く立香に、リアムはゆるりと微笑んだ。