Grand Order
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「オルタ、お姉ちゃん達と一緒にご飯を食べましょう」
「ちょっと!勝手に座らないで!!そもそも何でアンタが姉なのよ!」
「まったく、悪い方の私はいつまで反抗期でいるつもりなんです?子供じゃないんですから」
カルデアの食堂。
お昼時の和気藹々とした雰囲気の中、同じ顔をした3人のジャンヌ、ジャンヌオルタ、ジャンヌオルタサンタリリィ、の姉妹だそうじゃないという世にも奇妙なやり取りもここでは見慣れた日常だった。
「賑やかですね」
微笑ましげに3人な様子を見つめるリアムに、立香はそうだねぇとマシュが入れてくれた食後のお茶を啜る。
「私のことも姉妹認定してきた時は驚いたけどね」
困ったように笑う立香に、リアムはふむ、と暫し思案すると、立香とマシュの頭に手を置くと優しく撫ぜた。
「私も、マスターのことを妹のように思っているのですが……そうですね、彼女がお姉ちゃんビームなら、私はお兄ちゃんビームで対抗しましょうか」
あぁ、もちろんマシュのことも妹のように思っていますとも。
そう言って笑んだ彼に、マシュは顔を赤らめながら光栄です!と照れたが、反対に立香はぐっと胸を押え顔を歪める。
「こ、これがお兄ちゃん力……!!お兄ちゃんビームすごい……!」
「せ、先輩!?お気持ちは分かりますが、しっかりしてください!」
ぐうっ!と唸る立香とわたわたと焦るマシュ。
穏やかな午後の日に、リアムは悪戯っ子のように笑った。
・
カルデアの広い廊下でポツンと1人、アビゲイルはとても困っていた。
「どうしましょう……迷ってしまったわ……」
最近来たばかりのアビゲイルは、まだこのカルデアの内部を把握しきれていなかった。
もちろん喚ばれた初めに、マスターやマシュにカルデア内の案内をしてもらって大まかな、例えば食堂やマスターの部屋、レイシフトをする部屋等よく使う場所は覚えたのだが、ナーサリーやジャック達とかくれんぼをして遊んでいるうちに、普段は使わない見知らぬ場所にまで来てしまったようだった。
どこまでも続く白い壁に白い廊下、窓の外は変わらない雪景色。
すっかり困り果ててしまって、アビゲイルはしゅんと肩を落とした時だった。
「おや、こんな所でどうしました?」
背後からかけられた声に、アビゲイルは勢いよく振り向く。
声をかけたのは穏やかな笑みを浮かべるセイバーリアムだった。アビゲイルはほっと息をつく。
「あの、実は……みんなでかくれんぼをしていたら、迷ってしまって……」
「それは大変ですね。よろしければお送りしますよ」
「あ、ありがとう、リアムさん!」
その申し出に安心したように明るい笑みを浮かべるアビゲイルに、リアムは柔らかく微笑むとそっと手を差し出した。
「お手をどうぞ、お嬢さん」
「……お、王子様みたいだわ!」
お話で聞いたような一連の流れにアビゲイルはボンッ!と顔を赤らめるとおずおずとその手を取った。
「なら君はお姫様ですね、アビゲイル
昔こうすると、妹がよく喜んでくれました」
お姫様、なんていう呼び方にアビゲイルは益々顔が赤くしてしまう。
「私がお姫様だなんて、照れてしまうわ……
ね、ねぇリアムさん、よかったら貴方のお話がもっと聞きたいわ。えっと妹さんとは、他にどんなことをしたの?」
赤くなった顔でどうにか話題を変えようと、そう話しかければ、クスクスと笑いが漏れた。
「えぇ、構いませんよ。……そうだな、まだ妹が貴女よりずっと小さかった頃の話ですが」
温かな繋いだ手、柔らかな声に耳を傾けながら、そっとリアムの横顔を盗み見る。
妹のことを話す彼の顔は、王子様より優しい兄の顔をしていた。
・
「おや、珍しい」
たまたま立ち寄った談話室で、ゲオルギウスは思わずそう呟いた。
視線の先、1人がけのソファに座っているリアムの姿がそこにあった。普段は穏やかに周りを見つめる彼の瞳は今は完全に閉じられている。
サーヴァントは基本的に睡眠を必要としないが、趣向や習慣で睡眠をとっているものも中にはいる。リアムは睡眠をとらない方なのだが、今の彼は完全に眠っていた。しかも談話室のソファで転寝という本当に珍しい形でだ。
そういえば、とゲオルギウスの頭に浮かんだのはここ最近の出来事。
何か必要な素材が足りないとかで、しばらくの間数名のサーヴァントがマスターと共に戦闘を繰り返していて、その中にはリアムも含まれていたのだ。
ゲオルギウスの記憶では、昼間活動できる間はずっと素材集めをしていたように思う。
その連日の出ずっぱりに、さすがのリアムも疲れが出たのかもしれない。
サーヴァントに肉体的な疲労は少ないがまったくの0という訳でもないし、精神的な疲労はまた別だ。
ゲオルギウスは手身近にあった備え付けのタオルケットを手に取ると、そっとリアムにかけた。
「お疲れ様でした、リアム」
返事の代わりにすぅすぅと微かに漏れ聞こえる穏やかな寝息に、ゲオルギウスはクスリと笑む。
こうして眠っている姿は、普段の彼とは違う幼い顔をしていた。
静かにカメラを構えると、起こさないよう慎重にシャッターをきった。
切り取られた何気ない日常の姿。
戦いの中の尊いその瞬間に、ゲオルギウスは目を細めた。