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「申し訳ありません」
コンテナ群から撤退し、切嗣と合流したリアムが最初に口にした言葉は謝罪であった。
切嗣はそっと、先程のランサーとの戦闘で負傷したリアムの左手へ目を落とした。
呪いによって治療が出来ないその傷では、今後リアムが全力で剣を振るうことは難しいだろう。
それ故の謝罪に、切嗣は構わないと小さく横に首を振った。
相手の真名が分からない以上、初戦で力量や能力を見抜けと言うのは酷な話だろう。
今回の戦闘においては、相手が一枚上手だったというだけで、ランサーの槍が呪いを帯びているというのが分かったならば、次回からそれに合わせた対応をすればいい事だ。
「まずはランサー陣営を潰す必要があるな。舞弥と僕は相手の工房を探る。
アイリとセイバーは引き続き昼間の探索を。ただし、戦闘は控えてくれ」
切嗣からの指示に2人は確りと頷くと、アイリスフィールは疲労から部屋へと戻っていった。
「……君も、名乗りをあげたかったのか」
「え?」
切嗣からの急な問いに、リアムは彼に視線を向けるが、切嗣の視線は遠くを向いていた。
コンテナ群の戦闘で、ランサーは互いに真名を秘匿したまま戦うことを惜しんでいた。
ライダーに至ってはランサーとリアム、他に誰が聞いているとも分からぬ状況下で、堂々と自らの真名を名乗り上げた。
「名乗ることでの自信の現れや、戦う相手への誠意をみせる、ということでしょうか。
私は生前、あまり名乗りをあげることが無かったので、これと言って思うことはありませんでしたが」
“誠意”、ね……
リアムの言葉に、切嗣は嘲笑を浮かべた。
その瞳は、どこか薄暗い。
「これから殺し合いをするっていうのに、誠意も何もないと思うけど
英雄なんて連中は、誇りだ何だと理由をつけちゃいるが、所詮はただの人殺し。殺戮者だ」
そう吐き捨てるように言った切嗣の言葉に、リアムは思わず苦笑を滲ませる。
「そうですね。切嗣、貴方の言葉は間違いではありません。
私も、多くの人を殺した殺戮者でしょう」
切嗣の言葉を受け入れ、肯定する。
けれどその瞳には、強い意志を宿していた。
「私は私の大切なものを、守りたいものを守るために戦いました。
だから私は、その非難を受け入れましょう。恨まれても仕方の無いことだと。
それが例え綺麗事だと言われても、これが私がしてきた行為に対する責任だと思っています」
「……綺麗事だなんて、思わないよ」
罪に対する責任。
それを自ら背負うことの、その重さを、苦しみを知っているからこそ、切嗣は綺麗事などとは呼ばなかった。
リアムの手は、多くの人を屠り、幾度も血に濡れてきたのだろう。
それは自分も同じだ。
けれど、聖杯が手に入ればこの聖杯戦争が人が血を流す最後の戦いになる。
もう誰も背負わなくていい。
もう誰も苦しまなくていい。
もう誰も、手を汚す必要が無くなるのだ。
窓から見える月の光だけが、リアムの手を白く照らしていた。