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ランサーとリアム。互いの武器がぶつかり合う音と衝撃が、ビリビリと空気を震わせていた。
長槍と短槍、ニ槍の巧みな攻撃が、リアムを苦しめていた。
(この槍捌き、そうとう名を馳せた英霊なのは間違いない……せめてどちらの槍が宝具か分かれば、戦いやすくなるのですが……)
ランサーの短槍を受け止めたかと思えば、反対の長槍が振るわれる。
リアムは瞬時に短槍を弾き長槍を薙ぎ払うと、その勢いのままランサーを攻撃しようとするが、後方に身を引きよけられてしまう。
互いに一歩も譲らない戦いの中で、ランサーはどこか楽しげに笑った。
「名乗りも無いままの戦いに、名誉もクソもあるまいが……ともかく称賛を受け取れ、ここに至って汗一つ欠かんとは、柔和な優男だと思ったが、見上げた奴だ」
「いえ、貴方の名は知らずとも、貴方のその槍さばき、そうとう名を馳せた強者だということは分かります。そんな方から賞賛をいただけるとは、光栄です。有難く受け取りましょう」
敵同士でありながら、2人の戦いには誇りがあった。
自分がこの聖杯戦争で初めて戦う相手が、このセイバーで良かったと、ランサーは目を細める。互いに名乗ることができないのが、実に惜しい。
その時だった
「じゃれ合いはそこまでだ、ランサー」
突如コンテ群に響いた声、ランサーのマスターであろうが、音源の見えないそれに、アイリスフィールとリアムは警戒を強めた。
「これ以上勝負を長引かせるな、そこのセイバーは難敵だ、速やかに始末しろ、宝具の開帳を許す」
「……了解した、我が主よ」
ランサーは短槍を捨て、長槍を構え封を解くと、赫き槍身が姿を表す。
「……その長槍が貴方の宝具だったのですね」
「そういうわけだ、ここから先は、取りにいかせてもらう……!」
ランサーが一気に距離を縮め赫い長槍を振るった。
「私も、負けるわけにはいかないのです」
リアムがその長槍を受け止める、2人の間に火花が散った。
(宝具があの長槍ならば、その間合いより内に入ってしまえば……)
リアムは勢いよくランサーの胸部へと体を滑らせ剣を突き刺そうとする。ランサーの長槍が対応出来ない、間合いより内へと。
しかし
「それは失策だぞ、セイバー」
ランサーが捨てたはずの短槍が姿を現すと、リアムの左手の腱を斬った。
「……ッ!」
リアムの手から腕へと血が伝う。
腱を斬られた左手は、親指を動かすことが出来なくなっていた。
ランサーが負った傷は、ランサーのマスターによる治癒魔術により回復されていた。
もちろん治癒魔術を使っているのはランサー陣営だけではない、アイリスフィールもリアムの傷を癒すべく、魔術を使っていた。しかし、リアムの傷は一向に治る気配をみせない。
「どうして……!治癒は間違いなく効いている筈よ!?セイバー、貴方は今の状態で完治している筈なの!」
困惑が隠せないアイリスフィール。治癒魔術が効かないという現状に、リアムは一つの答えを出した。
「……1度穿てば、その傷は決して癒せぬと云う呪いの槍。
魔を断つ赤槍、呪いの黄槍。そして乙女を惑わす右目の泣きボクロ。
貴方はフィオナ騎士団随一の戦士、輝く顔のディルムッド・オディナ」
見事な槍さばきと癒せない傷、加えて美麗な顔に泣きボクロ。
確信を持ってその名を言えば、返ってきたのは肯定だった。
「ああ、確かに。我が真名をディルムッド・オディナ。やっとこちらは名乗ることができたが……貴方の名が知れぬ事が悔やまれるな
初めから、両腕が使える万全の状態で名乗り合い、戦うことが出来たのなら、良かったのだがな」
心底惜しいといったランサーの表情に、リアムは残った右手で強く剣を握る。
「私は貴方のように、良い意味で名を馳せることはありませんでしたから……。それに、私は片腕ですが、まだ勝ちを諦めたわけではありませんよ?」
片腕になってもリアムの目に宿り続ける闘気に、ランサーはおもしろいと目を細める。
両者が改めて武器を構えた、その時だった。
激しい音と急な光。それは、両者の間に突然落ちた雷。
「Ararararararararararaiiiiii!!!!」
驚き見上げたリアムの目に飛び込んできたのは、空を走る戦車だった。