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スーツ姿の リアムとアイリスフィールは2人、冬木の街を並んで歩いていた。
傍から見れば、美男美女のカップルがあてもなく歩いているように見えるが、その実他のマスターとサーヴァントの拠点を探る、という確かな目的をもって行動していた。
「やっぱり、そう簡単に他のマスターの魔力の痕跡は見つからないわね。」
「少し、休憩にしましょうか。」
ふぅ、とため息と共に呟いたアイリスフィールにそう提案すれば、彼女もそうしましょうか。と頷いた。
近場にあった公園のベンチで休憩することになり、アイリスフィールは1人、リアムが自販機で飲み物を買って戻ってくるのを待っていた。
最近、リアムと切嗣の関係性が変わったように、アイリスフィールは思っていた。
それは悪い意味ではなく、良い意味でだ。
以前までの2人は、ただ魔術師と使い魔。そういう関係だったように思う。
有難いことに、リアムは切嗣の事を嫌ってはいなかった。
けれど切嗣は、リアムと会話をしようとしなかった。
それが近頃は、切嗣からリアムに話しかけるようにもなり、笑顔が増えたように思う。
2人の間に何があったのかは分からない。
けれどアイリスフィールにとって、これは喜ばしいことだった。
「 ただいま戻りました。何か、良いことでもありましたか?」
思ったより、深く考え込んでいたのだろう。声をかけられ、ようやくリアムが戻ってきたことに気がついた。
「えぇ、とっても良いことがあったの。セイバー、それは何?」
彼の手には、お茶のボトル。それと薄茶色の紙袋。
「 飲み物を買う途中で見かけまして。たい焼き、と言うそうですよ。」
お礼を言って受け取ったそれは、温かく、たい焼きという名の通り、魚の形をしていた。
「熱いので、気をつけて食べてくださいね。」
その言葉に従って、少し息を吹きかけて冷ましてから、パクリと頬張りついた。
香ばしい生地と、程良い甘さの餡子が、絶妙なバランスで口の中に広がった。
「美味しい!」
キラキラと目を輝かせたアイリスフィールに、リアムはくすりと笑った。
「さぁ、休憩もしたし、行きましょうか。」
「はい。」
陽も傾き始めている。完全に沈んでしまう前に、拠点へ戻らなければならない。
公園を出て歩き始めた2人の前から、下校途中であろう小学生の女の子が1人、こちらに向かって歩いてきている。
リアムは何故か、その少女が気にかかった。
しかし少女は何事もなく、2人の側をすれ違って行く。
「……。」
唐突に黙って神妙な顔をするリアムに、アイリスフィールが声をかければ、すみません。と薄く笑って首を振った。
1度だけ、少女の方を振り返る。
紫色の髪に、真っ赤なリボンが揺れていた。
あの少女の濁った目が、頭から離れない。