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「ここに居ましたか、マスター」
アインツベルン城のとある一室で、武器の整備を行っていた衛宮切嗣に声を掛けたのは、何も無い空間から現れた1人の男だった。
男の正体は先日切嗣が召喚したサーヴァント。
クラスは最優と名高いセイバー、真名をリアムといった彼は、少しクセのある柔らかなアッシュグレーの髪に、琥珀色の美しい瞳を持つ柔和な雰囲気の美丈夫であった。
そんな自分のサーヴァントに1度チラリと目を向けただけで、切嗣は何も言わず武器の整備を続ける。その姿にリアムはただ困った様に苦笑を浮かべた。
何も切嗣のこの態度は今に始まったことではない、召喚された当初からこの様なのだ。リアムが切嗣に話しかけられたのは、彼の妻、アイリスフィールと行動を共にするよう指示を受けた際の1度のみで、その後は話しかけても返事が来ることは無かった。
聖杯戦争でサーヴァントとマスターとして共に戦う相手である筈なのに、この態度を取られれば、たとえマスターの使い魔としても大抵のサーヴァントは信用や信頼をするどころか、下手をすれば反抗心を抱かれても、仕方が無いと言えるだろう。
しかし、リアムが切嗣に抱く感情は違った。
「イリヤが貴方の事を探していましたよ。またクルミの芽探しをするのだと」
リアムの言葉に切嗣は一瞬動きを止めただけで、すぐに武器の整理を再開した。それでもリアムは穏やかに微笑む。
彼は知っていたからだ。このマスターが妻のアイリスフィールを、愛娘のイリヤスフィールを誰よりも愛していることを。
だからこそ、リアムは切嗣のサーヴァントととして戦うことを決めたのだ。
「……マスター、私が聖杯に抱く願いはありません。私は"衛宮切嗣 "貴方の呼び声に応じただけなのです」
切嗣の動きは止まらない。
「ですが私は、貴方とアイリスフィールとイリヤ。貴方達家族が当たり前のように笑って過ごせる日々が続いてもいいと、そう思っていますよ」
切嗣は何も言わない。
リアムは静かに姿を消す。
1人になった部屋で切嗣は舌打ちをした。
「……ふざけるな。そんなもの叶うはずがない」
親しい少数の命より、多数の他人の命を。
今更止まることは出来ない。多くを救うその度に、少数を犠牲に切り捨ててきた切嗣は、ただ
震える声で呟く事しか出来なかった。