弟たちよ、かわいくあれ
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その連絡が来たのは、いつもの夕飯前だった。
私はファミレスのエプロンを洗濯カゴに放り込みながら、ポロん、と音を立てるスマホの通知を眺めていた。
それは店長からファミレスグループへ投げられたとあるメッセージ。
『今度の金曜、新メンバーの歓迎会やります!』
……歓迎会、かぁ。
つまりは飲み会である。
…そして脳内にあの事件がフラッシュバックする。
私が家でうっかり一定以上飲んで、ハグ魔になって、弟たちにベタベタして、何かしらとんでもない発言をして、弟たちが戸惑いで困惑。そして私は何も覚えていない。
…というタチの悪い伝説の夜。
私は翌朝、弟達に上の一連の流れを聞かされ、深く反省し、そして学んだ。
今回の飲み会には行く。けど飲まない。
…これが大人の解答だ!
「よし」
小さく拳を握り、私は弟達がダラダラしているであろう居間へ向かう。
扉を開ければ弟たちはいつも通り…うん、いつも通りすぎるほどいつも通り。
だらだら・ごろごろ・ぐだぐだの三拍子で散らばっていた。
「ねぇ、みんな」
私が声をかけた瞬間、
6人が全く同じタイミングでぴたりと動きを止めた。群れの反射神経ってすごいな。
「今度さ、バイト先の飲み会に行くことになった」
…部屋の温度が2度3度冷えていく感覚。
そして私の脳内に、見えないテロップが流れてくる。
<松野家警戒レベルMAX>
…ついさっきまでのダラダラした雰囲気は何処へ。
寝転んで漫画を読んでいたチョロ松が、明らかに不審者を見つけた警備員みたいな目で私を見上げる。
「……へぇ、飲み会?姉さんそれは…飲み会=酒ってことだよね?」
チョロ松が、というよりも弟達全員が何を言いたいかなんて自分が1番よく分かっている。
まずは落ち着いて“結論”を投げることにした。
「大丈夫。お酒飲まないから」
……なのに、誰も信じていない目。
あの1番甘えん坊で基本私にベッタリなトド松でさえジト目で私を見つめてくる、なんかショックだ。
…いや私信用なさすぎでは?
「ちょっと、なんで全員そんな顔なの」
おそ松が腕を組んで眉間に皺を寄せている。
「だって姉さん、俺がお金借りて返したことある?それと同じくらい信用ならないんだけど」
「いやそこは比べる対象がおかしいでしょ」
そもそもちゃんとお金返してくれ。
破茶滅茶なことを言う長男を、同じ被害に遭ったであろう他の弟達も冷たい目で一瞥した。
しかし今はそれどころではないとでも言う様に一松が冷静に私に追撃する。
「…一滴も飲まないってレベルで宣言できる?」
「できるよ!ほんと反省したって!信じて!」
「ねぇ、ねえさん?その場の雰囲気でちょっとだけなら…ってならないでね?」
「な、ならない、絶対に」
ずいっとこちらに詰め寄りながらあざとモードなんて微塵も感じさせないトド松に思わず後退る。
するとカラ松がどこからか紙とペンを取り出して真顔で私に差し出した。その隣では十四松が、両手に松野印とご丁寧に朱肉まで。
「じゃあ姉さん、飲まないという誓約書を書いてくれ」
「拇印もオナシャース!」
「何それ!?!?」
そして気が付けば私は机に座らされ、いつのまにか用意されていた誓約書とやらにサインする羽目になったのだ。
謎の誓約書にサインしながらチラリと6人の顔を見る。
みんな、私のことを心配してるんだよね…?
心配の仕方が全員ちょっと重いけど、その重さがどこか可愛いとか思っちゃったりして…
にしても私が飲み会に行くだけで家の空気がこんなことになるのは軽く異常事態だと思うが。
「……そんなに心配?」
私が笑うと、弟達は見事同じタイミングでうん、と首を縦に振る。そしてカラ松が真面目な顔で
「姉さんが姉さんでいてくれることが、この家の均衡を保つ鍵なんだ」
とお得意のドヤ顔。
…なんか世界の安定装置みたいな扱いされてるんですけど。
「もう、分かった分かった。飲まないしちゃんと早めに帰る!これにサインもした!ほら、これで安心?」
6人は一斉に、“よし”といわんばかりの表情。
まぁ、こんなふうに本気で心配してくれる弟たちがいて、私は幸せ者なんだろうな、きっと。
…そう思っておこう…
…そしてまさか、あんな事が起きるだなんて…
この時は思ってもみなかったのだ。
続く
私はファミレスのエプロンを洗濯カゴに放り込みながら、ポロん、と音を立てるスマホの通知を眺めていた。
それは店長からファミレスグループへ投げられたとあるメッセージ。
『今度の金曜、新メンバーの歓迎会やります!』
……歓迎会、かぁ。
つまりは飲み会である。
…そして脳内にあの事件がフラッシュバックする。
私が家でうっかり一定以上飲んで、ハグ魔になって、弟たちにベタベタして、何かしらとんでもない発言をして、弟たちが戸惑いで困惑。そして私は何も覚えていない。
…というタチの悪い伝説の夜。
私は翌朝、弟達に上の一連の流れを聞かされ、深く反省し、そして学んだ。
今回の飲み会には行く。けど飲まない。
…これが大人の解答だ!
「よし」
小さく拳を握り、私は弟達がダラダラしているであろう居間へ向かう。
扉を開ければ弟たちはいつも通り…うん、いつも通りすぎるほどいつも通り。
だらだら・ごろごろ・ぐだぐだの三拍子で散らばっていた。
「ねぇ、みんな」
私が声をかけた瞬間、
6人が全く同じタイミングでぴたりと動きを止めた。群れの反射神経ってすごいな。
「今度さ、バイト先の飲み会に行くことになった」
…部屋の温度が2度3度冷えていく感覚。
そして私の脳内に、見えないテロップが流れてくる。
<松野家警戒レベルMAX>
…ついさっきまでのダラダラした雰囲気は何処へ。
寝転んで漫画を読んでいたチョロ松が、明らかに不審者を見つけた警備員みたいな目で私を見上げる。
「……へぇ、飲み会?姉さんそれは…飲み会=酒ってことだよね?」
チョロ松が、というよりも弟達全員が何を言いたいかなんて自分が1番よく分かっている。
まずは落ち着いて“結論”を投げることにした。
「大丈夫。お酒飲まないから」
……なのに、誰も信じていない目。
あの1番甘えん坊で基本私にベッタリなトド松でさえジト目で私を見つめてくる、なんかショックだ。
…いや私信用なさすぎでは?
「ちょっと、なんで全員そんな顔なの」
おそ松が腕を組んで眉間に皺を寄せている。
「だって姉さん、俺がお金借りて返したことある?それと同じくらい信用ならないんだけど」
「いやそこは比べる対象がおかしいでしょ」
そもそもちゃんとお金返してくれ。
破茶滅茶なことを言う長男を、同じ被害に遭ったであろう他の弟達も冷たい目で一瞥した。
しかし今はそれどころではないとでも言う様に一松が冷静に私に追撃する。
「…一滴も飲まないってレベルで宣言できる?」
「できるよ!ほんと反省したって!信じて!」
「ねぇ、ねえさん?その場の雰囲気でちょっとだけなら…ってならないでね?」
「な、ならない、絶対に」
ずいっとこちらに詰め寄りながらあざとモードなんて微塵も感じさせないトド松に思わず後退る。
するとカラ松がどこからか紙とペンを取り出して真顔で私に差し出した。その隣では十四松が、両手に松野印とご丁寧に朱肉まで。
「じゃあ姉さん、飲まないという誓約書を書いてくれ」
「拇印もオナシャース!」
「何それ!?!?」
そして気が付けば私は机に座らされ、いつのまにか用意されていた誓約書とやらにサインする羽目になったのだ。
謎の誓約書にサインしながらチラリと6人の顔を見る。
みんな、私のことを心配してるんだよね…?
心配の仕方が全員ちょっと重いけど、その重さがどこか可愛いとか思っちゃったりして…
にしても私が飲み会に行くだけで家の空気がこんなことになるのは軽く異常事態だと思うが。
「……そんなに心配?」
私が笑うと、弟達は見事同じタイミングでうん、と首を縦に振る。そしてカラ松が真面目な顔で
「姉さんが姉さんでいてくれることが、この家の均衡を保つ鍵なんだ」
とお得意のドヤ顔。
…なんか世界の安定装置みたいな扱いされてるんですけど。
「もう、分かった分かった。飲まないしちゃんと早めに帰る!これにサインもした!ほら、これで安心?」
6人は一斉に、“よし”といわんばかりの表情。
まぁ、こんなふうに本気で心配してくれる弟たちがいて、私は幸せ者なんだろうな、きっと。
…そう思っておこう…
…そしてまさか、あんな事が起きるだなんて…
この時は思ってもみなかったのだ。
続く
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