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PROGRESS

B区にて銃撃戦が発生していた同時刻。
C区の空き家にて、栗色の男はB区の自宅で"自分"が死んだ事をその目で確かに確認した。
男はC区の空き家越しにモニターを通して自宅の監視カメラを"常"に操作していた。
だからこそ、意識せずとも彼は事件のあらましを全て知る事になってしまったのだ。
当然自身が妻と子が、細切れになる程撃たれていくのを監視カメラ越しに見る事にもなる。
あまりにもひどい惨状に男は呻きその場で胃液を吐き出さずにはいられなかった。


栗色の髪を持つ男はそれからひたすら走り回った。
C区に拠点を持つ別荘の"足"がつくのも時間の問題だった。
彼は泣いていた、泣きながらも慌ただしく走り回っていた。
死んだのだ、自分が、家族が。
自身だけがその"能力"のお陰で今もこうして地に"足"をつけているわけだが。

そうして彼はC区の底、下水道へと潜り込むことにした。
幸いC区は荒れているせいか放置されている下水管理室が多々ある。
その1つを新たなる拠点とした。
然るべき日が来るまで彼はその身を隠すことにしたのだ。
この街全てが彼の敵だったのだから。






それから1年と少し後、バトラックシティを騒がせる人物が登場する。
ヒーローでもヴィランでもない、トレチコートにサングラスがアイコンの男。
その男は何とも不思議な者らしく、利害関係無く悪徳に走るものを追い詰めては、鮮やかな手際で殺していると噂されていた。
ガムを路上で捨てた青年を殴り殺したと噂もされれば、その反面で悪徳な政治家を絞めあげ殺したとも噂されている。
その人物は登場すると共に必ず「街の父親だ」と名乗るらしい。
それ以外は何もかもが不明だった。

マンホールの下へと篭っていた男は、そのアンチヒーローらしき存在に心底感銘を受けた。
街の監視カメラ越しにその姿を見つけた時だけは、この街に微かな希望を感じていられたのだ。

故に、こう思うようになるのに大して時間はかからなかった。
"この男なら、自身に協力してくれるのではないのか"と思うのに。
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