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死ぬほど驚くとはこの事で、全力で風呂場の壁へと飛び退いてしまった。
洗面器からは先程映ったものとは打って変わって、白くてふわふわした丸い物体が目だけをこちらへ向けて話しかけてきている。
その声は紛れもない、彼であった。
「ぎゃ…ギャルソンさん!あなた何やってるんですか!?」
「…ナマエさんにこれほど大きい声を出されたのは初めてですね。驚きました」
「驚いたのはこっちですって!!」
「ふふ、それは失礼。…よっこらしょういちっと…」
重くも無い身体を洗面器から抜き、こちらが瞬きしてた時には既にいつものタキシードを着たギャルソンへ変わっていた。
変わる瞬間を見逃したのが少し惜しいと感じたが、それよりも今まで家に来た事など一度も無い彼がここに居るという事実にまた驚かされてしまう。
「な、何で私の家に…?てかどうやってここに…」
「いやあ、結果が気になりましてね。移動手段は…企業秘密ということで」
暗闇の中でもしっかりと見える彼の姿に、移動うんぬんを聞くのは無駄なのかもしれない。
相変わらずニコニコとしながら洗面器の横に立っているギャルソンは、ここがナマエさんがいつも入浴している所ですか、などと言いながら風呂場見学を始めている姿に、抜けた腰で立てないため苦笑いしか出す事ができない。そして先程から驚かされっぱなしの所為なのか、何だか自分の行動が馬鹿馬鹿しく思えて仕方なくなってしまい、溜め息をつきながら肩を落としてしまうのだった。
「あ、そういえば…どんな方が見えたのですか?映ったはずですけど?」
「…ギャルソンさんの所為で見逃しちゃいましたよ」
元はといえば彼の所為なのだが、結果的にもう少しの所で見えなかったのだ。何だか惜しい気持ちでいっぱいになり、多少ぶっきらぼうに答えると、ギャルソンは落としてしまった櫛を拾ってはこちらへ静かに渡してきた。
「それは失礼しました。でしたらもう一度すればいい、ね?」
「もう一回、ですか?」
「ええ、時間もあることですし。ささ、どうぞ咥えて」
「ん…」
言葉を返す間もなく口に運ばれた櫛。反射的に咥えてしまったので仕方なく彼の提案どおり、もう一度占いをやる事にしたのだった。何故そこまでやらせたいのか、もう先駆するのはよそう。
ゆっくりと洗面器を覗き込んで見ていると、背中にひんやりとした温度が張り付く感覚がする。見なくとも分かるが、ギャルソンも背中にくっついて一緒に覗き込んでいるのだ。慌てて櫛を手に持ち代え、占いを再度中断。
「な…何やってるんですか!」
「あ、櫛を離したら見えないですよ」
「知ってますって!何でギャルソンさんまで一緒に覗き込む必要があるんですか!」
「私も気になると再三言ってるじゃないですか。大丈夫、背後霊一人くらいで映らない事はないでしょう」
「…もう、もういいです」
口で勝った事など一度も無い事を思い出し、全く怖くない背後霊をそのままに占いを再開させた。
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