名残
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「私が居なくなると寂しくなっちゃいますか?」
「そ、そういうこと普通は面と向かって聞ききませんよ…!」
部屋に入ってしばらくすると、ナマエさんは今一番聞かれたくない質問を投げかけてきた。我ながら子供っぽい引止め方をしてしまったのだと羞恥でいっぱいなのに…寂しいか寂しくないかと聞かれると、正直分からないのだ。
寂しさよりも、私は怖いのですよ、とても。
「…ナマエさんが帰っていく度に、そのまま来なくなるんじゃないかと思うんですよ…」
最近になって強くそれを思うのです。
喧嘩した、何か兆候が見られた、などではなくて、なんとなく。
自分でもよく分からない程に不安にかられ、ナマエさんが帰っていく後姿を見る度に引き止めたい衝動が起こるのだ。
「ギャルソンさん…」
そんな私を見てか、ナマエさんは突如として私に抱きつき、強く抱きしめてからしっかりとこちらを見つめた。
そうだ、この瞳が向けられなくなるのが怖い。だけどこうしてしっかり私を見てくれるなら…
「犬だって脱走しても帰省本能でお家に帰って来れます!だから人間の私なら記憶力ばっちりなので絶対に帰ってきますよ!」
「は?」
「犬よりも頭いいですもん!」
きらきらと輝く瞳には一転の曇りも無く、ナマエさんは自信たっぷりにそう答えたのだった。
開いた口が塞がらないとはこのことなのか、今までの雰囲気を180度覆してくれた彼女の考え方に何と返していいのか分からなくなり、先程までの自分の考えがあほらしくなってしまう。
抱きついているナマエさんの頭を撫でつつ、彼女は本気で言っているのだと思うと、そんな考え方は無駄なのかもしれないと不安が晴れていくのをしっかり感じ取っていた。
「…はいはい、犬を飼ってるつもりはないんですけどねぇ」
「だから犬じゃなくて人間です!かしこいんです!」
「あぁ…馬鹿可愛い…」
「今馬鹿って言いませんでした?」
「いいえ?空耳かなんかじゃ」
「うぅ…酷い事言うと噛み付いちゃいますわんっ!」
「そういうプレイをご所望でしたら最初に言ってくれないと準備が…」
「え?」
幸せだから、不安なんでしょうね。
それが分かると、不安さえも幸せに感じるのだった。
fin.
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