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献花

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「「「…」」」

「長い上にあんまり面白くなかったかな?ごめんね…でも本当にあった事なの。」

空気が凍りついたというのはこの事なのかもしれない。
間が悪いとかそういうのじゃなくて、恐怖で凍りついたのだ。面白い面白くないという問題ではない、普通の思い出話を語るように平然としているナマエさんが怖いと思うほど凄い恐怖体験だと感じられた。

「そ…それで、その後は…?」
「後って言うか、言われたとおり一度もお店には行ってないわ。約束だものね」
「…ストーカー男はその後店に現れてないんですか…?」
「うん…あれから全く。外を歩いてもつけられたりしてないし、本当に消えたみたいにね…」
「怪談レストランに消えた男…ねえナマエさん」
「ん?なにかしら?」

ショウ君はビデオをずっと構えて話を聞いてたけど、やっと今になって構える腕を下ろした。

「食材は二つも要らないって言ってたんですよね?」
「そう…だったわ。それが何か?」
「…食材って、その男とナマエさんだったんじゃないんですか?」
「え…」

怖い。確かにショウ君の言うとおり、よく考えてみれば最後の血まみれの男からして食材にナマエさんも候補に入ってたんだと分かる。そう考えたらあのレストランに入った私たちって…

「…ん?そういえばレイコ、さっきから固まってるけど大丈夫?」
「…ない」
「え?」
「…ナマエさん…怖い話じゃないって言ったのに怖いじゃないのよ…!」
「あら?それはごめんなさい、怖かったかな?」
「怖くないって言うから聞いたのに!酷いじゃないの!」
「私…トイレ先に行っておけばよかった…」
「すごく怖かったです。でも面白い話が聞けてよかった」
「…ははは!お子様を騙すのってホント楽しいなぁ!」
「「「え」」」

三人で声がはもる。先程とは打って変わって、床を叩きながら笑うナマエさんに私たちは唖然として見つめた。騙すって…ってことは?

「え…も、もしかしてさっきの全部…」
「そ、作り話だよ!レイコちゃんがあんまりにもあの廃墟で起きた事を話すもんだから、つい…ははは」
「だ…騙されてたなんて…!あんまりじゃないの!」
「ごめんねぇ、でも皆本当に怖がってくれて嬉しいわ」
「そ、そんなぁ!怖がって損した…」
「でもね、ストーカーのお話は全部本当よ?怖かったのも事実だしね…」

酷い。やっぱり大人の言う事って信用できない!
すっかりからかわれてしまった私は、やけ食いとばかりにお菓子を頬張ってジュースを飲み干した。ナマエさんは笑っていたけれど、ストーカーって本当に怖いんだと思い知らされたのだった。
話し終わって暫く笑ったり他愛も無い話をしたナマエさんだったけど、席を立ち時間なので帰ると言い出した。

「さてと、私はそろそろ帰りますね。今日は楽しかったよ、ありがとう」
「ふんっ!次来たら家に入れてあげないんだからっ」
「そ、それは困っちゃうわ…」
「レイコ…家庭教師なんだからそれはダメだって…」

相変わらずレイコはからかわれたりするのが嫌いなようで、すっかり機嫌を損ねてしまっていた。宥めつつ、ふとショウ君の方を見ると、無言でナマエさんを見詰めては眉間に皺を寄せ、何か怪しんでいるかの様にも見て取れた。
そういえばショウ君だけ騙されたと知った時も何も言わなかった様な…何かひっかがっている事でもあるのかな?
すると、先程から黙っていたショウ君が口を開いた。

「あのナマエさん、一つ聞いてもいいですか?」
「ん?なにかな?」
「…その花束は何ですか」

ショウ君が指差す先にあるもの。それはナマエさんのバックの横においてある色とりどりの花束だった。
先程まで笑っていたナマエさんはその質問に無言になり、そのままバックと花束を持って部屋のドアへと歩いていくと、最後に振り返ってこう言ったのだ。

「感謝の気持ちだよ」

その意味を理解したのはナマエさんが家を出て行った後だった。


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