献花
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店の中に居る。そうはっきり言ったわ。さも当然のようにね。私は一瞬で血の気が引いて、また怖いと言う気持ちに支配されていくのが分かった。またパニックになって、男の人に詰め寄ったの。
「だ、だったら早く逃げなきゃ!どうして早く言ってくれないんですか!」
「ですから、大丈夫だと言っているじゃないですか。ここではそんな事関係ないんですよ」
「何を言って…」
こんこん…
怖さと怒りで気が昂ぶっていた私の耳に、扉を叩く音が聞こえた。もしかしたらあの男かも…と椅子の上で頭を隠してうずくまると、またタキシードの男の人は笑って大丈夫だと言ってきた。
「大丈夫ですよ、あれはうちの従業員ですから。ちょっと待ってて下さいね」
そういって席を立ち、扉越しに何やら相談をしているようだった。途中聞こえてきた言葉がね、調理はどうするかとか、今日にメニューがどうかとか、本当にレストランの従業員の会話だったのを覚えているわ。こんなに悠長な事してて従業員は大丈夫なのかと心配になったくらいにね。しばらくするとタキシードの男の人は帰ってきて、私にこういったの。
「もう男の事は気にしなくていいですよ。大丈夫ですから」
「え?大丈夫って…どう、大丈夫なんですか?」
「一生心配しなくていいです、という意味です。ふふふ…」
「…?」
サイレンの音がしていない事から警察が来ていないのは明らかだし、どんな理由で大丈夫なのか不安になったけど、この人の大丈夫という言葉に何故だか安堵したの。パニックって怖いわ、今考えたら何で信用したのか分からないもの。
男の人はしばらく私を見ると何か悩み始めたの。あごに手を当てて、さも私をどうするかを悩んでるみたいだった。何を今更悩んでるのか分からなかったけど、暫く考え込んで自分で何か納得したかのように頷き始めたの。
「ふむ…まあ今回だけは特別ですね。何かの縁ですし」
「え?何が、ですか?」
「私ね、本当に今日は機嫌がいいんですよ」
「そうなんですか…」
「それに二つも食材は要らない事ですし」
「しょくざ…」
「とにかく!あなたは本当に運がいいんですよ、喜んで下さい」
「は、はあ…」
「さあ、入り口までご案内しましょう。」
そう言ってまた笑いながら私の手を引いてさっき入ってきた店の扉の前まで連れてくると、扉を開いて外の安全を確認してくれた。やっぱり男はもう居ないみたいで、どうにか私は助かったようだった。どうやって助けてくれたのかはやっぱり分からなかったけど、とにかく心からこの男の人に感謝したわ。
「ほらね、もう大丈夫。これからは気をつけてお帰りくださいね」
「あ、あの…本当にお世話になりました。命の恩人です…」
「命の…。ふふ、そういう事になるんですねぇ」
「何かお礼を…」
「お礼、ですか?うーん…そうですねえ…」
助けてくれたのだもの、お礼をするのは当然だと思った私は何をしたらいいのか男の人に聞いたの。だけど、少しだけ悩んで男の人が出した答えは少し変わってたわ。
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