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パーティーは終わらない!


 困った事になった。
 今自分が置かれてる状況に、思わず頭を抱える。
 何故ーー本当に何故こんな事になってしまったのだろう。
「むぎちゃ〜ん、枝豆まだぁ〜?」
 私の背中に張り付くように抱きついてくる壮五さん。完全に酔いが回ってる時の状態だった。 普段のしっかり者の壮五さんなら、このような甘え方は先ずない。 それこそ、絶対と言い切れるくらいに。
 そしてーー
「紡ちゃん〜聞いてよお〜」
 私の右横にはTRIGGERの十龍之介さんがいた。
 私のブラウスの裾をつまんで、頬を紅潮させ、半泣きの状態で言い寄ってくる。 ……こちらも相当酔いが回っているようだっだ。

 本当、何故こんな事に……。

 私は二人の要求になんとか応じながら、事の発端を思い返す。
 最初はーーそう、最初は壮五さんと環さんが、十さんと食事をする筈だったのだ。 伝え聞いた話だと、そうだったと認識している。
 環さんのおねだりを気の良い優しい十さんが了承して、紆余曲折があり壮五さんが場をセッティングしたそうなのだが……ここで問題が発生した。
 環さんが食事の会を欠席する事になったのである。欠席の理由は風邪。仕事に支障は無いものの、微熱があり、このまま食事会に参加するのは十さんにも迷惑がかかるという事で、環さんには大事を取って寮で休んでもらう事になった。 それは仕方のない事で、プロとして芸能界にいる以上、体調を整える事が先ず何より優先すべき事である。 だから、それはいいのだ。それが最善の選択と言える。
 だけど、ここで問題視しているのは壮五さんだった。
 壮五さんはTRIGGERのファンである。そんな壮五さんが、十さんと一対一で食事というのは、彼の性格を考えた上でもかなり危険な行為と言えた。
 二人きりのシチュエーションなんて、嬉しさと緊張が度を越して、壮五さんの胃に穴が開いてしまう。
 それだけは、何が何でも避けなければならない。
 だから、誰か環さんの代わりに同席できるメンバーはいないか探したが、TRIGGERに対して距離を置いてるメンバーや、単純に今日は仕事が入ってしまっていけないメンバー、と……そんな感じで、代理が見つからなかったのである。
 そこで消去法で私が壮五さんと一緒に同席する事になったのだが……。
 今現在、私は、酔いが回り過ぎるほどに回ってる二人に絡まれてる状態である。
「壮五さん、枝豆剥けましたよ」
「食べさせて」
「えっ?!」
 それは酔うと壮五さんがいつも言い出す言葉とはいえ、IDOLiSH7のメンバーの前じゃなく、別の事務所のアイドルである十さんの前でするのは……と、思わず狼狽えてしまう。
 けれど、そんな私を他所に、壮五さんは口を開けて待っている状態だった。
 正直、普段では絶対に見れない壮五さんのその様子に口元がにやけてしまう。
 か、可愛い……って! ダメダメ!! そんな風に思っている場合じゃっ……
「紡ちゃん〜」
「は、はい?!」
 心の中で葛藤していると、私のブラウスの裾をつまんだままの十さんが再び呼んでくる。咄嗟の事に私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「俺、別に悲劇のヒロインぶってるわけじゃないんだよお〜。 俺はただ、楽と天に仲良くして欲しいだけでえ〜」
「だ、大丈夫ですよ。 楽さんと九条さんは仲良いですから。 ただお互い素直になれてないだけです。 十さんの気持ちだって、お二人共ちゃんと判って下さってますよ」
「うぅ……そうかなぁ……」
 ヒクッヒクッと酔ってるゆえのしゃくりを上げながら十さんはまるで捨てられた犬のようにしょぼーんと俯く。
 あ、あのTRIGGERの十龍之介さんがこんな表情を見せるなんて……か、可愛い!!……って、だからそうじゃなくってえええっ!!
 不純な思いを抱いてしまってる自分に、心の中で大きく頭を振る。
 だ、駄目だ……このままじゃ、私がおかしくなってしまう……。
「むぎちゃん〜枝豆はぁ〜?」
「あ……あ、はいっ! 只今!」
 私の葛藤など知る由もない壮五さんが口を開けたまま枝豆を要求してくる。
 今の壮五さんはどれだけ枝豆を食べたいのだろう……?
 そんな疑問符が沸きつつ、いつものように壮五さんの口に枝豆を入れる。
 すると、壮五さんとても満足そうな、蕩けそうなほど幸せな表情を浮かべていた。
 これは……写真を撮りたい……!!
 ここまでお世話をしているのだから、それくらいの事をしても許されるのではないだろうか。と、自分に言い訳をして、私はポケットに仕舞っていたスマートフォンを手に取る。
 すると、私より一回り以上大きい手が私のスマートフォンを持つ手を掴む。
 思わずギョッとしてその手の主を見ればーーそれは壮五さんと同じくらい酔っている十さんのものだった。
「紡ちゃん〜」
「は、はい?!」
 また素っ頓狂な声を出してしまった……。いや、だって。
「やっぱり、俺じゃ、楽と天の仲を取り持つなんて出来ないんだよぉ……二人とも顔合わせる度喧嘩するんだもん……」
「そ、それは、喧嘩するほど仲良いって事じゃ……」
「むぎちゃん〜、ししゃもの頭取って〜」
「こ、今度はししゃもですか…?!」
 ……だ、駄目だ。 流石に私一人じゃ酔った二人を捌き切れる訳がない。
 けれど、だがしかし、である。
 これを読んで下さってる皆様にここで一つ重要なお知らせをさせていただきたい。
 この食事会が始まったのは十九時。そして現在は十九時半である。そう、食事会開始からまだ三十分しか経過してない。
 つまり、まだ暫くはこんな二人の相手をしなくちゃいけない訳で……果たして数時間後、自分はどうなってしまっているのか想像すると思わず溜息が溢れてしまう。
 だって、大好きな人達とこんな距離感でいるなんてーーそれは、私じゃなくても舞い上がってしまうに違いないのだから。
壮紡龍SSです。あまりカップリング要素はなく、どちらかといえば3人がわちゃわちゃしているだけのほのぼの話です。
*別名で活動している支部より転載したものになります。

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