すたんどばいみー
「東京駅にー!!行きたいかー!!」
「「おーーー!!!」」
毛玉が塗装の剥がれ苔の生えた郵便ポストの上に立って謎の掛け声をあげている。
すでにここは東京駅の目の前だが今のところ人の気配は全く感じることができない。
煉瓦で作られていた駅舎は驚くことにその形をいまだに残していた。経年劣化によって味わいが増すとも言われている煉瓦だが、古代ヨーロッパの時代から現代までずっとそのままあるという建築物もあるという。その甲斐あってか、ガラスや一部の箇所を基点として壊れており内部は雨曝しではあるものの、パッと見て東京駅であると判別できたことに驚いた。
もしかすると実はそれほど自分がいた時代から年月が経っていないかもしれないがそんなことは今の自分には預かり知らぬことである。
思考の海から這い上がり早速内部の探索をしよう。
「本日の現場はほーらくがよそくされます。みなさん防具は大丈夫ですか?」
「はい、芝隊長!ヘルメットも完璧です!」
「芝にぃ隊長!ヘルメットに緑のバッテンもちゃんと描きました!」
「よろしい!はなまるです!」
毛玉達もやる気は満々だそうだ。ところであのヘルメットとタイガーロープなどはどこから持ってきたのだろうか。さっきまで半袖短パンだったくせにしっかり作業着を着て安全靴まで履いてやがる。俺にも分けてくれないかダメもとで交渉するだけしてみよう。
「豆芝団のみなさんや、俺にもその道具を分けてくれないか?」
彼らはよくどこからともなくこうやって変なものを持ってくることがある。今回も一体どんな手を使ったのか皆目見当もつかないが、便利なことには違いあるまい。
「えぇ…」
すごい嫌そうだ。めちゃくちゃ嫌そうだ。そのぷりちーなもふもふな顔にそんなにシワを寄せるんじゃないぞ団ちゃん。
「せーへきはひとそれぞれだから…まぁ…」
「あったかい目で見守ろうぜ?な?」
とても不安な会話がヒソヒソと交わされている気がする?一体どう言った思考の玉突き事故を経てこんな不名誉なことを言われているのか。
「えっと…おれも頭が隠せるものがほしいなーって…だめかい?」
ダメもとで聞いていたがこれでは違う意味で引き下がれないじゃないか。
「頭だけ…???」
「丸出し…???」
「でも見る人がいないならば罪に問われないって…」
なんだろう、悪化した気がする。この毛玉どもが本気なのかふざけてるのか最初のうちはわからなかったが長い付き合いを経た今ならわかる。こいつらは本気なのだ。
「えっと…あのぉ」
芝がとてもいいにくそうに行ってくる。俺が一体何をしたって言うんだい。
「ご要望には答えられないのですが…人間サイズで少し小さめの服とヘルメットを用意したのでこれで我慢してもらえませんか…?」
我慢とはなんのことなのか、否、サイズが小さいことであろう。そうに違いない。長時間の労働が予想される中でサイズの合わない道具は疲労や事故につながると言う。彼らなりの思いやりなのだ。そうだと言ってくれ。
「これなら多少ピッチリしてるからよ。スケベ度合いは高いと思うぜ?無理に俺たちと同じサイズのものを破きながら着なくてもいいんだぜ?」
「流石に人がいなくてもやっぱり人としての尊厳は失っちゃダメだよ…?」
なんで俺が嗜められているのか。とりあえず欲しかったものは手に入れられたはずなのになぜこんなにも嬉しくないのか。
もらった作業着のそでを通しながら今みで自分が犯してきた過去の罪禍を考えてみても果たして答えが出ることはないだろう。
「俺たちいいことしたね!」
「しゃかいふっきってやつだー!」
「人助けをするのもいいたぬきの証だ!」
お前達が楽しそうで何よりだ。キャイキャイ騒ぐ三毛玉どもを尻目に駅舎の中に入っていく。
埃と土のにおいが充満しているが他の薬品などの匂いはしない。ひとまず散策する分に危険はないだろうと判断してかつての往来をすすむ。
東京駅はビジネスの中心地であると同時に大きな観光地であった。華やかな広告と立ち並ぶ店舗。キラキラと光る電飾達は今や見る影もなくガラスやプラスチック、コンクリートとくすんだ鉄屑の残骸ばかりが広がっている。経年劣化による部分もそうだが、人による破壊活動などもあったのだろう。動植物に埋め尽くされているものの、横に薙ぎ倒され中身が空っぽのレジがそれを物語っていた。
駅舎内で歩ける場所はとりあえず隈なく歩いてみたが一向に人の気配がない。
正確に言うならば、俺たちの足跡以外の痕跡が一切ないのだ。
「なぁお前ら、どこら辺で人間を見たんだ?」
人の痕跡がないことは別にいい。しかし動物の痕跡がないのは妙だ。これだけ建物が残っているのだから野生動物達の巣としては適しているはずだ。これが何を指し示しているかはわからないが一旦棚上げして人を探す方が優先だろう。
「「「さぁ…???」」」
さぁじゃないが?
「お前らの中で誰が人間見たんだ?」
嫌な予感がしてきた。
「芝じゃねーの?」
「団ちゃんだよ!」
「豆にぃが言ってたんじゃん!」
喧嘩するんじゃない毛玉ども。なるほど、確かに出発する前に確認しなかった俺も悪いがこれは流石にくたびれ儲けだ。どっと体から力が抜けてへたり込んでしまった。
「…ごめんね…?」
「わるかったよ…」
「ごめんなさい…」
フサフサのお耳をしょぼんとさせて毛玉どもがやってくる。少なからず責任のようなものを感じているようだが、実際のところ別段彼らの責任というわけでもなくいつの日かここに調査に来ることに違いはないのだから気に病む必要もない。
「大丈夫だよ。少し疲れちゃっただけだから」
少しから元気で笑ってみる。
「ほんとぉ?」
「ゆっくりしようぜ」
「おれ!なんか食べ物とってくる!」
「あっ、芝にぃナイスアイデア!オレも!」
「俺もいくー!」
俺のから元気が効いたのかわからないが三毛玉は元気よく飛び出して行った。そうそう、お前らはそうやって元気よくしている方が似合うと言うものだ。
「ぴゃー」
それ以上にここに動物が住んでいないというのがそうなってくると問題かもしれない。何か獰猛な生物の縄張りかもしくは俺たちが気づいていないだけで何か有毒な物質があるのかもしれない。
「「ぴゃーー!」」
人がいないことがわかった以上長くここに滞在することは不要だ。早めにここから撤退するのも一つの手だろう。なんていったって
「「「ぴゃーーーーーーー!!!!」」」
アホどもが謎の機械に追われながらこちらに走ってくるのだから。
なぜ少し目を離した隙にそんなトラブルを持ち込めるんだいお前らは。
「たすけてー!」
「なんかへんなのがいるー!」
「俺たち食われちゃうー!!!」
俺の背中に隠れる毛玉たち。さらっと人を盾にすることができるあたりこいつらの性格の良さと言うものがとてもよくわかる。
「大丈夫だよ、これはただの警備ロボット。」
「ロボットです?」
「アトムだあー!」
残念ながら10万馬力は出すことはできないだろう。東京駅周辺の施設には自動運用ロボットがあると聞いていたが初めて見た。
形状は丸長いつつのような胴体と下の部分にはホイールがついている。正面には目のようなガラス部品があるが片方割れてしまっているようだ。手入れなどされているわけではないため見た目は全体的にボロボロとなっており、一瞬野生動物か何かに見えてしまった。
「ぎ…ぎがが…ががぁ…」
「「「しゃべったーーー!!?」」」
騒がしい奴らだ。とはいえ自分がいた時代ではここまでフォルムは洗練されていなかったし、音声案内機能なんてなかったはずだ。そう考えると自分が知っているロボットよりも進化したロボットなのかもしれない。
「がび…ぴびぴ…」
「ふむふむ?お腹がすいたって?」
「豆にいちゃんわかるの?すごーい!」
「まぁなぁ!」
怖くないとわかった途端強気なアホどもは一旦放っておこう。
このロボット、自動充電式のはずだが肝心の電気がなくては稼働なんてできないはずだ。どこかで発電機か何かぎ生きていると言うことだろうか?
「おれは芝です!好きな食べ物はきゅうりです!」
「ぴ…がが…ぴが…」
「はっはっはー!お前面白いなぁ!」
なんか打ち解けてる…?いや、適当に遊んでいるだけだろうが三毛玉に鉄屑がくわわって騒がしくなった感じである。さながらブレーメンの如き統一感のなさに呆れてしまう。
しかしなるほど、動物が住んでいない理由はこいつが巡回してるからか。
「びが…びび…」
「君は何食べるの?ベーコン?ハンバーグ?ソーセージ?」
なぜ肉縛りなのか不思議だが、これ以上こいつらと交流させてると壊してしまうかもしれない。それはなかなかに目覚めが悪いためさっさと撤退するとしよう。
「ほら、帰るぞお前ら。今から帰ればまだ日があるうちに帰れるからな。」
「「「はーい」」」
「び…が…と…ござ…がががた…」
「ばいばーい」
不思議な遭遇者に別れを告げる。
本来の目的とは違ったが、確かにここに人がいたこと、そして人が作ったものがまだこの世界には存在していると言うことがわかっただけでも十分だろう。発電施設などに対してはまた今度ゆっくり探しにくればいい。
「万次郎寂しがってるかなー!」
「万次郎のあるところまできょーそーだー!」
毛玉が春風と共に颯爽た走り去っていく。背後にはまだ自立型ロボットが一台たたずんでいた。彼、もしくは彼女がなんだか寂しそうに感じてしまうのは俺の勝手な感傷だろうか。
「はやくー!!かえろーよー」
「あー、はいはい、いまいくよー。」
聞こえてくる声に答えながら俺は薄暗い駅舎を抜けて外に向かって歩き始める。
「今日の晩御飯なーにー?」
駅舎にこだまする三たぬきの声が、さっきよりも大きく鳴り響いているように感じられた。
「「おーーー!!!」」
毛玉が塗装の剥がれ苔の生えた郵便ポストの上に立って謎の掛け声をあげている。
すでにここは東京駅の目の前だが今のところ人の気配は全く感じることができない。
煉瓦で作られていた駅舎は驚くことにその形をいまだに残していた。経年劣化によって味わいが増すとも言われている煉瓦だが、古代ヨーロッパの時代から現代までずっとそのままあるという建築物もあるという。その甲斐あってか、ガラスや一部の箇所を基点として壊れており内部は雨曝しではあるものの、パッと見て東京駅であると判別できたことに驚いた。
もしかすると実はそれほど自分がいた時代から年月が経っていないかもしれないがそんなことは今の自分には預かり知らぬことである。
思考の海から這い上がり早速内部の探索をしよう。
「本日の現場はほーらくがよそくされます。みなさん防具は大丈夫ですか?」
「はい、芝隊長!ヘルメットも完璧です!」
「芝にぃ隊長!ヘルメットに緑のバッテンもちゃんと描きました!」
「よろしい!はなまるです!」
毛玉達もやる気は満々だそうだ。ところであのヘルメットとタイガーロープなどはどこから持ってきたのだろうか。さっきまで半袖短パンだったくせにしっかり作業着を着て安全靴まで履いてやがる。俺にも分けてくれないかダメもとで交渉するだけしてみよう。
「豆芝団のみなさんや、俺にもその道具を分けてくれないか?」
彼らはよくどこからともなくこうやって変なものを持ってくることがある。今回も一体どんな手を使ったのか皆目見当もつかないが、便利なことには違いあるまい。
「えぇ…」
すごい嫌そうだ。めちゃくちゃ嫌そうだ。そのぷりちーなもふもふな顔にそんなにシワを寄せるんじゃないぞ団ちゃん。
「せーへきはひとそれぞれだから…まぁ…」
「あったかい目で見守ろうぜ?な?」
とても不安な会話がヒソヒソと交わされている気がする?一体どう言った思考の玉突き事故を経てこんな不名誉なことを言われているのか。
「えっと…おれも頭が隠せるものがほしいなーって…だめかい?」
ダメもとで聞いていたがこれでは違う意味で引き下がれないじゃないか。
「頭だけ…???」
「丸出し…???」
「でも見る人がいないならば罪に問われないって…」
なんだろう、悪化した気がする。この毛玉どもが本気なのかふざけてるのか最初のうちはわからなかったが長い付き合いを経た今ならわかる。こいつらは本気なのだ。
「えっと…あのぉ」
芝がとてもいいにくそうに行ってくる。俺が一体何をしたって言うんだい。
「ご要望には答えられないのですが…人間サイズで少し小さめの服とヘルメットを用意したのでこれで我慢してもらえませんか…?」
我慢とはなんのことなのか、否、サイズが小さいことであろう。そうに違いない。長時間の労働が予想される中でサイズの合わない道具は疲労や事故につながると言う。彼らなりの思いやりなのだ。そうだと言ってくれ。
「これなら多少ピッチリしてるからよ。スケベ度合いは高いと思うぜ?無理に俺たちと同じサイズのものを破きながら着なくてもいいんだぜ?」
「流石に人がいなくてもやっぱり人としての尊厳は失っちゃダメだよ…?」
なんで俺が嗜められているのか。とりあえず欲しかったものは手に入れられたはずなのになぜこんなにも嬉しくないのか。
もらった作業着のそでを通しながら今みで自分が犯してきた過去の罪禍を考えてみても果たして答えが出ることはないだろう。
「俺たちいいことしたね!」
「しゃかいふっきってやつだー!」
「人助けをするのもいいたぬきの証だ!」
お前達が楽しそうで何よりだ。キャイキャイ騒ぐ三毛玉どもを尻目に駅舎の中に入っていく。
埃と土のにおいが充満しているが他の薬品などの匂いはしない。ひとまず散策する分に危険はないだろうと判断してかつての往来をすすむ。
東京駅はビジネスの中心地であると同時に大きな観光地であった。華やかな広告と立ち並ぶ店舗。キラキラと光る電飾達は今や見る影もなくガラスやプラスチック、コンクリートとくすんだ鉄屑の残骸ばかりが広がっている。経年劣化による部分もそうだが、人による破壊活動などもあったのだろう。動植物に埋め尽くされているものの、横に薙ぎ倒され中身が空っぽのレジがそれを物語っていた。
駅舎内で歩ける場所はとりあえず隈なく歩いてみたが一向に人の気配がない。
正確に言うならば、俺たちの足跡以外の痕跡が一切ないのだ。
「なぁお前ら、どこら辺で人間を見たんだ?」
人の痕跡がないことは別にいい。しかし動物の痕跡がないのは妙だ。これだけ建物が残っているのだから野生動物達の巣としては適しているはずだ。これが何を指し示しているかはわからないが一旦棚上げして人を探す方が優先だろう。
「「「さぁ…???」」」
さぁじゃないが?
「お前らの中で誰が人間見たんだ?」
嫌な予感がしてきた。
「芝じゃねーの?」
「団ちゃんだよ!」
「豆にぃが言ってたんじゃん!」
喧嘩するんじゃない毛玉ども。なるほど、確かに出発する前に確認しなかった俺も悪いがこれは流石にくたびれ儲けだ。どっと体から力が抜けてへたり込んでしまった。
「…ごめんね…?」
「わるかったよ…」
「ごめんなさい…」
フサフサのお耳をしょぼんとさせて毛玉どもがやってくる。少なからず責任のようなものを感じているようだが、実際のところ別段彼らの責任というわけでもなくいつの日かここに調査に来ることに違いはないのだから気に病む必要もない。
「大丈夫だよ。少し疲れちゃっただけだから」
少しから元気で笑ってみる。
「ほんとぉ?」
「ゆっくりしようぜ」
「おれ!なんか食べ物とってくる!」
「あっ、芝にぃナイスアイデア!オレも!」
「俺もいくー!」
俺のから元気が効いたのかわからないが三毛玉は元気よく飛び出して行った。そうそう、お前らはそうやって元気よくしている方が似合うと言うものだ。
「ぴゃー」
それ以上にここに動物が住んでいないというのがそうなってくると問題かもしれない。何か獰猛な生物の縄張りかもしくは俺たちが気づいていないだけで何か有毒な物質があるのかもしれない。
「「ぴゃーー!」」
人がいないことがわかった以上長くここに滞在することは不要だ。早めにここから撤退するのも一つの手だろう。なんていったって
「「「ぴゃーーーーーーー!!!!」」」
アホどもが謎の機械に追われながらこちらに走ってくるのだから。
なぜ少し目を離した隙にそんなトラブルを持ち込めるんだいお前らは。
「たすけてー!」
「なんかへんなのがいるー!」
「俺たち食われちゃうー!!!」
俺の背中に隠れる毛玉たち。さらっと人を盾にすることができるあたりこいつらの性格の良さと言うものがとてもよくわかる。
「大丈夫だよ、これはただの警備ロボット。」
「ロボットです?」
「アトムだあー!」
残念ながら10万馬力は出すことはできないだろう。東京駅周辺の施設には自動運用ロボットがあると聞いていたが初めて見た。
形状は丸長いつつのような胴体と下の部分にはホイールがついている。正面には目のようなガラス部品があるが片方割れてしまっているようだ。手入れなどされているわけではないため見た目は全体的にボロボロとなっており、一瞬野生動物か何かに見えてしまった。
「ぎ…ぎがが…ががぁ…」
「「「しゃべったーーー!!?」」」
騒がしい奴らだ。とはいえ自分がいた時代ではここまでフォルムは洗練されていなかったし、音声案内機能なんてなかったはずだ。そう考えると自分が知っているロボットよりも進化したロボットなのかもしれない。
「がび…ぴびぴ…」
「ふむふむ?お腹がすいたって?」
「豆にいちゃんわかるの?すごーい!」
「まぁなぁ!」
怖くないとわかった途端強気なアホどもは一旦放っておこう。
このロボット、自動充電式のはずだが肝心の電気がなくては稼働なんてできないはずだ。どこかで発電機か何かぎ生きていると言うことだろうか?
「おれは芝です!好きな食べ物はきゅうりです!」
「ぴ…がが…ぴが…」
「はっはっはー!お前面白いなぁ!」
なんか打ち解けてる…?いや、適当に遊んでいるだけだろうが三毛玉に鉄屑がくわわって騒がしくなった感じである。さながらブレーメンの如き統一感のなさに呆れてしまう。
しかしなるほど、動物が住んでいない理由はこいつが巡回してるからか。
「びが…びび…」
「君は何食べるの?ベーコン?ハンバーグ?ソーセージ?」
なぜ肉縛りなのか不思議だが、これ以上こいつらと交流させてると壊してしまうかもしれない。それはなかなかに目覚めが悪いためさっさと撤退するとしよう。
「ほら、帰るぞお前ら。今から帰ればまだ日があるうちに帰れるからな。」
「「「はーい」」」
「び…が…と…ござ…がががた…」
「ばいばーい」
不思議な遭遇者に別れを告げる。
本来の目的とは違ったが、確かにここに人がいたこと、そして人が作ったものがまだこの世界には存在していると言うことがわかっただけでも十分だろう。発電施設などに対してはまた今度ゆっくり探しにくればいい。
「万次郎寂しがってるかなー!」
「万次郎のあるところまできょーそーだー!」
毛玉が春風と共に颯爽た走り去っていく。背後にはまだ自立型ロボットが一台たたずんでいた。彼、もしくは彼女がなんだか寂しそうに感じてしまうのは俺の勝手な感傷だろうか。
「はやくー!!かえろーよー」
「あー、はいはい、いまいくよー。」
聞こえてくる声に答えながら俺は薄暗い駅舎を抜けて外に向かって歩き始める。
「今日の晩御飯なーにー?」
駅舎にこだまする三たぬきの声が、さっきよりも大きく鳴り響いているように感じられた。