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カプなし、カプ未定、他キャラ

 ずっと続く何か。永遠なんて嘘っぱちや。キラキラしてきれいで楽しくて大好きなものが、一生、それこそ永遠にそこにずっとあって変わらずに掴めるなんて、そんな都合のええ話があるわけがない。
「寿三郎」
 それは、この人との関係も同じ。ちょっとした些細なことで、人の関係は簡単に壊れる。好きで一緒におったはずやのに、傷つけあって離れていくなんてこと普通にある。
 そう。この人と、月光さんと一緒におれるのも永遠やない。ずっと一緒におれるなんて、そんな都合のええ話しがあるわけがない。
「寿三郎。誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。今年もこうやって一緒に祝ってもらえてうれしいですわ。俺、ほんま幸せ者ですね」
「そうか」
「そうですよ。当たり前やないですか」
 よかったな。そう言われた気がして、曖昧に笑う。
 そう。幸せ者なのはええことや。今年もこうやって月光さんに祝ってもらえて、お祝いの言葉とプレゼントももろうて、同じ時間を過ごせてる。
 ほんま、幸せ者やで。
 この幸せが、ずっと続けばええのに。ずっと、このままでおれたらええのに。続かへんてわかってても、永遠なんて嘘っぱちゃってわかってても願ってまう。
「では、これから先もずっとその当たり前が続くように努力しよう」
「努力って例えばどんなことするんです?」
「……この一月三日という日の予定は、毎年必ず寿三郎の誕生日会だけにする。だろうか」
「そ、れは、またえらい先の話ですね。しかもなんや、その言い方やとずっと俺の誕生日会やってくれるみたいで、ドキッとするわぁ」
「? だから、そのようにすると言ったんだ」
 呼吸が止まるかと思うた。当たり前に差し出される「ずっと」に胸が張り裂けそうになる。月光さんの手が頬に触れて優しくなでてくれる。なんやようわからんけど、いきなり目が熱くなってちょっと冷たい手に縋りついた。
「寿三郎」
 月光さんが名前を呼んでくれる。突然泣き出してしがみついた俺のことを心配してくれんのがよくわかって、やっぱり胸が痛くなった。
「寿三郎、誕生日おめでとう。来年も、再来年も、その先も。ずっと、こうしてお前に伝えることを誓う。生まれてきてくれてありがとうと、この日にともに祝うことを誓う」
 だから好きなだけ泣け。そう言われたんだと思いたくて、俺は月光さんにしがみついたまま顔をあげた。
 やっぱり月光さんは俺のこと優しく見下ろしとって、柔らかい手つきで頭も撫でてくれて。
 そうしてずっとこうして誕生日を祝ってくれると、言ってくれた。
「俺、ずっとって言葉あんま信じてへんのですけど」
「……ならば、信じられるように行動で示すとしよう。来年も楽しみにしていろ」
 他にも言うことあるやろうに、空気ぶち壊すようなことを言った。やのに月光さんはただ優しくそう言ってくれるだけで。
 俺、いつか月光さんの優しさに殺されるんかもしれん。
「そんなら、来年も再来年も、ずっと楽しみに待っとります!」
 待つからずっと、待っとるから。
 だから月光さん。
 いつかその優しさで永遠を信じられない俺を殺して。
「ケーキも用意してあるが、もう少し落ち着いてからにするか」
「いや、今食べましょ! 今! 俺の誕生日と、えらい気の長い約束に乾杯して!」
 ようやく自然な笑みを浮かべた毛利に、越知は静かに微笑んだ。
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