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カプなし、カプ未定、他キャラ

 合宿終了間近のとある夜。
「必然であってほしいと、願うことがある」
 突然の告白に寿三郎は目を白黒させて月光を見た。机に向かって本を読んでいた はずの顔が、いつの間にかまっすぐにこちらを見つめている。
 プレッシャーを伴って熱心に突き刺してくる視線は、その発言の意図をそれ以上 説明してくれそうにない。
(……何がやろ)
 考えてみても、何が必然であってほしいのかまるで分らない。
 いつも唐突に始まって唐突に終わる月光の思考の発露は、少し慣れた程度では容易に読み解くことを許さない。
 頭をフル回転させて唸っている寿三郎に注がれる熱い視線は変わらず、重いプレッシャーを伴って何かに気づけとせっついてきた。
 答えをくれる気はないくせに、答えに気づいてほしいと訴えてくる視線。それに耐えかねて寿三郎は思考を放り投げ、やけくそ気味に吐き捨てた。
「俺は別に、偶然でもええですけどね」
「……そうか」
「なんでそんな傷ついた顔すんの」
「さしあたって問題はない」
「問題ない人はそんな顔しません」
 目を伏せ、何かに耐えるように口の端を曲げた月光は拗ねた幼子のようだった。
 いつも大人っぽい彼の意外な一面を見れた優越感と、何やら理不尽な目にあっているような不満が腹の底で渦巻いた。
 ため息をつく月光の顔を覗き込むように寿三郎は腰を曲げた。
「偶然やったらあかんの?」
「必然にするまでだ」
 再び寿三郎に定められた視線が、ギラリと光る。
「月光さん、かっこよすぎますわ」
 小さく鼻を鳴らした月光は手に持っていた本に視線を落とした。にわかに速くなった心臓をおさえながら、寿三郎は偶然と必然について意味もない考えをめぐらせる羽目になった。
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