「にゃあ」
　毛利は精一杯の裏声で、もうこれ以上はないというくらい可愛らしく鳴いてみた。
　耳が熱い。口から飛び出そうな心臓を宥めることもできず、じっと大好きな恋人の顔を見上げる。
「……うちに、猫は一匹だけだと思っていたが」
　愛猫と戯れていた越知の手が止まって、ゆっくりとその口元が柔らかく緩む。
　伸びてきた手が頬を撫でる心地よさに首伸ばした。
　もっと、と毛利は喉を鳴らしそうな程とろけきった顔をして手に頭を擦り付ける。
「にゃ」
「……来い」
「にゃーん」
　自分の膝の上に体を投げ出した毛利を見下ろして、越知は柔らかく吐息をつく。
　二人のそばに近づいてきた猫を牽制するように、膝にしがみついて場所を与えないようにしている様子が愛らしくてたまらない。
「に、にゃあ」
「あぁ。わかっている」
　毛利の体を抱き起こして、猫の鳴き声しか出てこない口にキスを贈った。