立海大附属中学校調理部副部長の私。丸井に負けない最高のケーキを作ることが今の目標!部長の代わりに出席した生徒会会議で書記の柳蓮二くんを見てからドキドキする…
第1冊目
お前は確かA組の…
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
うちの調理部は毎週木曜日が休みだ。だけど副部長の私と部長の環奈は少し調理室に寄って明日の仕込み、メニューを用意する。部員は和食グループ、環奈率いる洋食グループ、中華グループ、そして私がまとめる製菓グループの4つに分かれていて、明日は和食グループがメインとなる。和食グループがメインディッシュとなる精進揚げと出汁からこだわる澄まし汁。洋食グループ、中華グループはサブでおひたし、ごはん炊きなど、複数をこなしてもらう。製菓グループは今回水羊羹を作ることにして、冷蔵庫の中を補充してから環奈と別れた。丁寧に缶に入れた真田お墨付きのゼリーとマカロンを持って、テニスコートへ向かう。柳くんは受け取ってくれるだろうか。せめて丸井に何が好きか聞けばよかったな。
テニスコートに着くと、相変わらずコートの周りには少なくないギャラリーが騒ぎはしないものの熱い視線を彼らに向けている。
「あれ、碧海先輩!」
ギャラリーの何人かは私の後輩だったようだ。
「佳奈ちゃんと綾音ちゃんじゃん。誰を見てるの?」
何気ないふうを装って聞いてみる。
「もちろん仁王先輩ですよ!」
「私は柳生先輩です」
へえ、と相槌を打ちながら、相手が柳くんじゃない事に心の中で胸をなで下ろした。
「あ、碧海じゃん!あと佳奈ちゃんと綾音ちゃんも!」
私達の声が大きかったからか、丸井が気づいたようで私達に手を振る。軽く手を振ると、
「おっ、お前その紙袋、食べ物持ってるだろぃ!」
速攻でバレてしまった。いつもは奪ったり奪われたりしているが、今回ばかりは丸井ごときに渡すわけにはいかないのだ。
私は紙袋の中の缶を揺らさないようにして丸井のもとへ走る。ギャラリーの丸井ファンの皆には海原祭で私の事は知られているから、丸井と気安く話すことはほぼ黙認されているような感じだ。もっとも、丸井はどんな子にも同じように接しているけど。
「丸井お願い!柳くんに差し入れに来たの!だからいい感じに口利きして!一生のお願い!」
柳くんは真田と何か話しているようでこちらには気づいていないようだ。
「は?碧海お前、柳の事好きなの?」
「生徒会会議で一目惚れした。真田に試食してもらって許可もとったから味と衛生面は天才レベル」
丸井は若干引いているようだ。今更そんなことは気にしない。丸井は引きつつもそういう事は嫌いじゃないので、快諾してくれるはずだ。事実、丸井は私を見てにやりと笑っている。
「立海まんじゅう2週間分」
「…月曜日の部活、あんたの好きなケーキをあんたのだけ別にホールで焼いてあげる」
「乗った」
まるで映画の交渉成立の場面のように強めのハイタッチをする。
いつもはケーキの勝負で苦渋を味わっている丸井が今日ばかりは神様に思える。
「おーい柳!ちょっと来てくれよ」
「どうした丸井」
柳くんがこっちに向かってくる。どうしよう。10メートル以上離れていてもかっこいいなんて柳くんはどうかしている。やばい。
「こいつ、俺がいつも勝負してる碧海」
「ああ、よく話している彼女か」
「そうそう、次はケーキ以外で勝負って話になってさ。試作品が出来たから柳くんに感想教えて欲しいってさ」
(丸井お前、天才かよ…)
丸井に感動しつつも私は口を開く。
「丸井からいつも話聞いてるよ。私は料理部副部長の島野碧海。柳くんなら的確なアドバイスをくれるんじゃないかって思ったの。よかったら協力お願いできないかな?」
来る前に薬用リップをたくさん塗ったはずなのに、緊張ですでに唇はカサカサだ。
「なるほどな。島野さん、その紙袋の中身がそれなのか?」
柳くんが私の持っている紙袋を指差す。
「うん、蜂蜜レモンのゼリーとレモンのマカロン」
「ほう、爽やかだな。最近少し気温が上がってきているからな、今の季節には丁度いい。きちんと保冷もされている」
私から紙袋を受け取る時、少しだけ手が触れたけれど柳くんはそんなこと気にしていないようだった。私は半分死にかけている。
「ありがとう。部活が終わったらゆっくり食べさせて貰おうか。島野さん、確か料理部は今日休みだったな」
「うん」
料理部のスケジュールまで覚えているのか。柳くんは学年でもかなり頭のいい人だけど、さすがに驚いた。さすが生徒会。
「部活が終わるまであと1時間といったところだが、この後時間があるならコート脇のベンチで待っていてくれないか。感想はすぐに伝えた方がいい」
丸井が柳くんの死角から小突いてくる。私も嬉しさを紛らわすように丸井を小突く。今の私はたぶん世界で1番幸せ者だ。
「わかった。せっかく待っているだけじゃあれだから、何か手伝えることがあったら言ってね」
環奈と話す時と同じように普通感を出して話す。心の中で大きくガッツポーズをした。
コート脇のベンチには、部長の幸村くんが座っていた。
「おや、君はさっき蓮二と丸井と話していた子だね」
「うん。真田と同じクラスの島野碧海。幸村精市くんだよね?」
「そうだよ。島野さんというと、去年の海原祭で丸井といい勝負をしていたのは君だね」
「よく覚えてるね」
「あの後しばらく丸井は君を倒す話ばかりしていたからね」
幸村くんがくすくす笑う。ついこの間まで入院していたと聞いていたけれど、体調は悪くはないみたいだ。
「それで島野さん、なぜここに居るんだい?」
幸村くんが隣に座った私に尋ねる。
「丸井との次の勝負に向けて柳くんに試作品のアドバイスをお願いしたら、今日のうちがいいだろうって待っててくれって言われたの」
「なるほどな、蓮二が…」
なんだその含みのある言い方は、と少し不思議に思ったけど、真田の大きな声でそんなことは直ぐにどうでも良くなった。びっくりして肩がびくりと震えると、幸村くんが横で面白そうにしている。
「島野さん、真田のこと苦手でしょ」
「ちょっと怖いけどね。最近、話したら案外大丈夫って気づいた」
「その言葉、赤也にも聞かせてやりたいよ」
幸村くんは真田が大好きみたいだ。
テニスコートに着くと、相変わらずコートの周りには少なくないギャラリーが騒ぎはしないものの熱い視線を彼らに向けている。
「あれ、碧海先輩!」
ギャラリーの何人かは私の後輩だったようだ。
「佳奈ちゃんと綾音ちゃんじゃん。誰を見てるの?」
何気ないふうを装って聞いてみる。
「もちろん仁王先輩ですよ!」
「私は柳生先輩です」
へえ、と相槌を打ちながら、相手が柳くんじゃない事に心の中で胸をなで下ろした。
「あ、碧海じゃん!あと佳奈ちゃんと綾音ちゃんも!」
私達の声が大きかったからか、丸井が気づいたようで私達に手を振る。軽く手を振ると、
「おっ、お前その紙袋、食べ物持ってるだろぃ!」
速攻でバレてしまった。いつもは奪ったり奪われたりしているが、今回ばかりは丸井ごときに渡すわけにはいかないのだ。
私は紙袋の中の缶を揺らさないようにして丸井のもとへ走る。ギャラリーの丸井ファンの皆には海原祭で私の事は知られているから、丸井と気安く話すことはほぼ黙認されているような感じだ。もっとも、丸井はどんな子にも同じように接しているけど。
「丸井お願い!柳くんに差し入れに来たの!だからいい感じに口利きして!一生のお願い!」
柳くんは真田と何か話しているようでこちらには気づいていないようだ。
「は?碧海お前、柳の事好きなの?」
「生徒会会議で一目惚れした。真田に試食してもらって許可もとったから味と衛生面は天才レベル」
丸井は若干引いているようだ。今更そんなことは気にしない。丸井は引きつつもそういう事は嫌いじゃないので、快諾してくれるはずだ。事実、丸井は私を見てにやりと笑っている。
「立海まんじゅう2週間分」
「…月曜日の部活、あんたの好きなケーキをあんたのだけ別にホールで焼いてあげる」
「乗った」
まるで映画の交渉成立の場面のように強めのハイタッチをする。
いつもはケーキの勝負で苦渋を味わっている丸井が今日ばかりは神様に思える。
「おーい柳!ちょっと来てくれよ」
「どうした丸井」
柳くんがこっちに向かってくる。どうしよう。10メートル以上離れていてもかっこいいなんて柳くんはどうかしている。やばい。
「こいつ、俺がいつも勝負してる碧海」
「ああ、よく話している彼女か」
「そうそう、次はケーキ以外で勝負って話になってさ。試作品が出来たから柳くんに感想教えて欲しいってさ」
(丸井お前、天才かよ…)
丸井に感動しつつも私は口を開く。
「丸井からいつも話聞いてるよ。私は料理部副部長の島野碧海。柳くんなら的確なアドバイスをくれるんじゃないかって思ったの。よかったら協力お願いできないかな?」
来る前に薬用リップをたくさん塗ったはずなのに、緊張ですでに唇はカサカサだ。
「なるほどな。島野さん、その紙袋の中身がそれなのか?」
柳くんが私の持っている紙袋を指差す。
「うん、蜂蜜レモンのゼリーとレモンのマカロン」
「ほう、爽やかだな。最近少し気温が上がってきているからな、今の季節には丁度いい。きちんと保冷もされている」
私から紙袋を受け取る時、少しだけ手が触れたけれど柳くんはそんなこと気にしていないようだった。私は半分死にかけている。
「ありがとう。部活が終わったらゆっくり食べさせて貰おうか。島野さん、確か料理部は今日休みだったな」
「うん」
料理部のスケジュールまで覚えているのか。柳くんは学年でもかなり頭のいい人だけど、さすがに驚いた。さすが生徒会。
「部活が終わるまであと1時間といったところだが、この後時間があるならコート脇のベンチで待っていてくれないか。感想はすぐに伝えた方がいい」
丸井が柳くんの死角から小突いてくる。私も嬉しさを紛らわすように丸井を小突く。今の私はたぶん世界で1番幸せ者だ。
「わかった。せっかく待っているだけじゃあれだから、何か手伝えることがあったら言ってね」
環奈と話す時と同じように普通感を出して話す。心の中で大きくガッツポーズをした。
コート脇のベンチには、部長の幸村くんが座っていた。
「おや、君はさっき蓮二と丸井と話していた子だね」
「うん。真田と同じクラスの島野碧海。幸村精市くんだよね?」
「そうだよ。島野さんというと、去年の海原祭で丸井といい勝負をしていたのは君だね」
「よく覚えてるね」
「あの後しばらく丸井は君を倒す話ばかりしていたからね」
幸村くんがくすくす笑う。ついこの間まで入院していたと聞いていたけれど、体調は悪くはないみたいだ。
「それで島野さん、なぜここに居るんだい?」
幸村くんが隣に座った私に尋ねる。
「丸井との次の勝負に向けて柳くんに試作品のアドバイスをお願いしたら、今日のうちがいいだろうって待っててくれって言われたの」
「なるほどな、蓮二が…」
なんだその含みのある言い方は、と少し不思議に思ったけど、真田の大きな声でそんなことは直ぐにどうでも良くなった。びっくりして肩がびくりと震えると、幸村くんが横で面白そうにしている。
「島野さん、真田のこと苦手でしょ」
「ちょっと怖いけどね。最近、話したら案外大丈夫って気づいた」
「その言葉、赤也にも聞かせてやりたいよ」
幸村くんは真田が大好きみたいだ。