1話
出来る限り穏便に、かつ興味津々な雰囲気を醸し出しながら尋ねる。彼の瞳が一瞬だけ細められて、警戒の色を露わにした。
そうだよね、見知らぬ女の子に突然声をかけられたら警戒するよね。ましてやパンチングされた後だもん、なおさらだ。
しかし彼は、落ち着いた態度を崩さない。
「すみません、急いでるので」
「5分だけでいいんです。お時間は取らせませんので」
「―――え、おい……」
彼の手首を掴んで歩き出せば、後方から不満げな声が上がる。ちょっとだけ良心が痛むけど、彼の呼び掛けには応じず、近くにある公園に足を踏み入れた。
古ぼけた木製のベンチまで彼を誘い、私は足早に水飲み場へ向かう。バックから取り出した花柄のハンカチを水で濡らして、急いで彼の元へ戻った。
「ほっぺ、冷やした方がいいですよ。見事なもみじになってますから」
痛ましい姿の彼にハンカチを差し出す。頬の事には触れて欲しくなかったんだろう、彼は始終気まずそうな表情を浮かべていた。
とはいえ、赤く腫れあがった状態を放置するわけにもいかず、大人しく私からハンカチを受け取った。そのまま左頬に当てる。
「……悪い」
「いえ。それより、座りません?」
朗らかな笑顔を向けながら、真横にあるベンチを指差す。ここで断られて逃げられてしまうと困るので、彼の返事も待たず、先に私が座る。
疑わしげな視線を私に向けながら、お兄さんも渋々といった感じで隣に腰を下ろした。
よしよし。第一関門は突破した。
そうだよね、見知らぬ女の子に突然声をかけられたら警戒するよね。ましてやパンチングされた後だもん、なおさらだ。
しかし彼は、落ち着いた態度を崩さない。
「すみません、急いでるので」
「5分だけでいいんです。お時間は取らせませんので」
「―――え、おい……」
彼の手首を掴んで歩き出せば、後方から不満げな声が上がる。ちょっとだけ良心が痛むけど、彼の呼び掛けには応じず、近くにある公園に足を踏み入れた。
古ぼけた木製のベンチまで彼を誘い、私は足早に水飲み場へ向かう。バックから取り出した花柄のハンカチを水で濡らして、急いで彼の元へ戻った。
「ほっぺ、冷やした方がいいですよ。見事なもみじになってますから」
痛ましい姿の彼にハンカチを差し出す。頬の事には触れて欲しくなかったんだろう、彼は始終気まずそうな表情を浮かべていた。
とはいえ、赤く腫れあがった状態を放置するわけにもいかず、大人しく私からハンカチを受け取った。そのまま左頬に当てる。
「……悪い」
「いえ。それより、座りません?」
朗らかな笑顔を向けながら、真横にあるベンチを指差す。ここで断られて逃げられてしまうと困るので、彼の返事も待たず、先に私が座る。
疑わしげな視線を私に向けながら、お兄さんも渋々といった感じで隣に腰を下ろした。
よしよし。第一関門は突破した。