5話 こんな大人になれたらいいのに。

 犬用のデザートをくまちゃんと眺めている間、卯月さんはラムネの栓を開けてくれた。ポン、と軽やかな音が弾け、ビー玉が瓶の中に沈む。透明な液体が涼しげに輝いて、シュワシュワと炭酸が泡立っていく様が綺麗に映る。

「ここまでしてくれるなんて思わなかったです。くまちゃんも嬉しそう」
「言ったろ? 当日はくまが主役だって」

 そう言いながら、卯月さんは悪戯っぽく微笑んだ。まるで悪戯に成功した男の子のような無邪気な笑顔。私も嬉しくて微笑み返す。
 くまちゃんの為に手の込んだイベントを考えてくれて、本当に感激しかなかった。不埒なことを企てていた自分が恥ずかしいくらいだ。

「ふふっ。浴衣着てこればよかったね」
「今回はサプライズだしな。今度する時は浴衣姿で来いよ」

 ――今度。さりげなく未来の約束を持ちかけられて、また嬉しさが込み上げる。

 その後も卯月さんとおうち縁日を堪能した。たくさん食べて、くまちゃんとも遊んで、本当に楽しいひと時を過ごした。卯月さんはこんなにも、私とくまちゃんとの一緒の時間を大切にしてくれる。
 はしゃいでいたくまちゃんも次第に落ち着いてきて、遊び疲れてウトウトし始めた頃。テーブルの上を片付けていたら、卯月さんが寝室から戻ってきた。

「今日はもう寝るか。先にシャワー浴びて来いよ」
「うん、ありがとう。卯月さんも寝る?」
「俺はやる事があるからまだ起きてる。奈々は先に休めよ。寝室に客用の布団出しておいたから」
「何から何までありがとう卯月さん!」
「どういたしまして」
「でも卯月さんも、ちゃんと休んでね?」

 私の言葉に「わかってるって」と答えて笑う。本当かな……と心配になったけど、とりあえず言われた通りに浴室へ向かった。
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