4話

 言いながら、卯月さんは無邪気に笑った。屈託のないの笑顔と、嬉しさを滲ませた彼の言葉に胸がきゅんと高鳴る。

「うづ―――」

 呼びかけようとした、まさにその時。突然、夜空に轟く大音響が辺りに響き渡った。
 私達の視界いっぱいに咲き乱れる花火の華。眩い閃光が一斉に空を彩り、それは瞬く間に散っていく。人々の歓声が一気に沸き起こり、辺りは興奮の坩堝と化した。

「うわあ……っ」

 圧倒的な光の奔流に息を呑む。次々と打ちあがる花火は、赤や青などの光彩を放ちながら夜空に弾けていく。その煌びやかな色彩の饗宴に、私も卯月さんもただ黙って花火を見上げていた。

「―――奈々」

 不意に、名前を呼ばれた。唐突な低音が鼓膜に刺さり、反射的に声の方を向く。
 微かに笑みを含んだ卯月さんの顔が、今は花火ではなく私に向けられていて。目が合った瞬間、心臓がまた大きく跳ねた。

「えっ……急に名前?」
「いや、ちょっと呼んでみただけ」
「な、なんで?」
「なんとなく。なんか変な感じするな」

 くすくすと愉快そうに笑う卯月さんから目を離せない。動揺してる私に追い討ちをかけるように、今度は彼の左手が私に伸びてきた。
 反射的に避けようとしたら、ひょいとあっさり捕獲される。抵抗できないまま捕らえられた右手が、卯月さんの手のひらの中に収まってしまった。

「あっ……え?」

 しどろもどろになる私に、卯月さんはますます笑みを深くする。からかわれてると気づいて、私は気まずさに目を逸らした。
 彼にとってはちょっとしたイタズラのつもりなのかもしれない。そんな私の反応を楽しみつつも、卯月さんは逃がしてくれなかった。
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