4話

「家族で?」
「そう。よく両親が連れていってくれた。俺は弟と妹の面倒も見ながら一緒に屋台回ってさ」
「兄弟仲良いんですね」
「まあな。ちょっと目ぇ離すと、二人ともすぐにどっかに行っちまうんだよな。探すの大変だった」

 当時の苦労を語りながら卯月さんは苦笑した。初めて聞く兄弟エピソードに耳を傾けながら、私は二つ目のたこ焼きを口に運ぶ。

「卯月さん、長男だもんね。お兄ちゃん気質強いもん」
「朝霧は一人っ子だったな」
「うん。お兄ちゃんとか欲しかったな」

 もし兄妹がいたら、と考える機会は多かった。父親はほぼ家にいないし、親戚と呼べる人達も少なくて。必然的に育児の中心は母だった。その結果、母に負担を掛けないように振る舞うことが多かった幼い頃の私。だから、無条件で甘えられる兄や姉の存在にずっと憧れを抱いていた。
 ……そっか。もしかしたら私は、存在しない兄の理想像を卯月さんに重ねていたのかもしれない。だから卯月さんに甘えたくなるし、普通の男の子には抱かないような感情を抱いてしまうのかもしれない。
 そんな胸の内を明かせば、卯月さんはふと眉根を寄せて考え込むように視線を彷徨わせた。何を思ったのかは私にはわからない。首を傾げると、卯月さんは苦笑しながらぽつりと呟いた。

「朝霧と一緒に祭りに行くなんて、出会った頃は夢にも思わなかったわ」
「え?」
「まさか女子大生と来ることになるとはな」
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