4話

 神社の鳥居を潜ると、屋台のライトアップが目の前に広がった。笛太鼓のリズムに合わせて子供達が走り回る。焼きそばやたこ焼きの香ばしさが鼻を刺激して、一気に空腹感が増した。

 やっぱり初手は定番の屋台を目指したい。とはいえ、メイン通りはすでに大勢の人で賑わっている。まだ夕方だというのに凄い人だかりだ。慎重に歩かないと、人波に揉まれて転んでしまいそう。
 なんとか卯月さんにくっついて歩くけれど、慣れない下駄では歩調を早めるのも難しい。予想外の混雑具合に焦った私は、つい卯月さんの袖を強く掴んでしまった。

 そんな私の様子に気付いた卯月さんが、袖を握る私の手を取り――……滑るような流れで指を絡めてきた。

「え?」

 驚いて彼を見上げる。指先に伝わる温もりと力強い感触。脈打つ鼓動が急に激しくなる。

「悪い、下駄だったな」
「あ、うん」
「足痛くねぇ?」
「大丈夫だよ」
「腹減ったし、何か買って空いてるスペースで食おうぜ」

 そのまま卯月さんに手を引かれる形で露店エリアを進んでいく。指と指の隙間を埋める彼の体温を感じながら、胸の中は嬉しさと戸惑いでぐちゃぐちゃだった。ううん、比率的には嬉しさの方が勝ってる。でもこんな、手を繋ぐまでの流れが自然体だとか、恋人繋ぎだとか、私達には程遠い行為のはずなのに。
 動揺してる私とは逆に、卯月さんの態度はいつも通りだ。彼は大人だから、こんなことくらいでいちいち動揺もしないんだろう。この経験値の差にもどかしさを感じたものの、せっかくのお祭りなんだし、と私は気持ちを切り替えた。
 今は深く考えないようにしよう。嬉しいものは嬉しいんだし。
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