4話

「卯月さん、何で急にデートなんて言い出したの?」
「デートとは言ってないけど。……俺ら、会うのはいつもこの部屋だろ」
「うん」
「たまには外に出るのもいいかなって思っただけ」
「そうなんだ……ん?」

 ふと視界の端に何かが見えた。足下を見ると、一枚のチラシが落ちている。卯月さんの手がその紙切れを拾い上げて、私もひょこっと覗き込んでみると。

「地元の神社でお祭り……?」

 そこには花火のイラストが華やかに描かれていて、ポップな字体で『神社祭開催のお知らせ』と書かれている。日付は……来週末だ。

「へえ。花火大会もあるんだな」
「お祭りなんてもう何十年も行ってないよ~」

 幼かった頃の記憶を掘り起こす。脳裏に浮かんだのは懐かしいお祭りの情景。母親と浴衣に着替えて、2人で出店を歩き回った思い出が蘇る。
 父親は常に仕事で忙しいから自宅不在が多く、対して母親は職業柄、1ヵ月に数回程度の仕事しかない。だからイベント事はいつも母と一緒に楽しんでいた。
 けれど、それも小学生の頃まで。中学・高校時代は友達と出掛けることもあったけど、周囲から浮くのが恐くてあまり楽しめなかった。

「行くか、祭り」
「えっ」
「行くだろ?」

 問われて、私はもう一度チラシに視線を落とした。境内や通りに吊るされた提灯、色とりどりの暖簾が連なり、たくさんの屋台に群がる家族連れや子供達。その中に交じり、一緒にお祭りを楽しむ私と卯月さん。そんな風景が頭に浮かんだ瞬間、高揚感が胸を突き上げた。
 大きくて迫力のある花火が空高く打ち上がる、その景色はとても綺麗だろうなあ。その光景を卯月さんと2人で眺めるのも楽しそう。

「……行く!」
「じゃあ決まりな」
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