4話

・・・

「どっか行くか」

 食器を洗い終えた卯月さんが、不意にそんなことを呟いた。中華風の食器を慎重に棚に戻しながら、私は彼を振り返る。

「どっかって、どこ?」
「どこでもいいけど。どこに行きたい?」

 卯月さんの会話はいつも淡々としてる。このお誘いの意図も、私にはさっぱりだ。
 どうして急にお出掛けしようなんて言い出したんだろう。食材探し? グルメ巡りでもしたいのかな? どう答えていいのかわからなくて、私はうんうんと唸る。

「朝霧」
「うん?」
「行きたいところ、ないのか?」

 問い詰めるように尋ねられてますます困惑する。私の行きたいところ……? 思考を巡らせて、とある場所を思い浮かべる。

「ラブホ」
「却下」
「はい……」

 あわよくばと思っていた企みは秒で砕け散った。即答が早すぎて悲しい。私の誘いをことごとく回避する卯月さんは鋼の精神の持ち主なんじゃないだろうか。
 行きたいところなんてあったかな、と必死に考えてみるものの、娯楽目的でのお出掛けスポットには馴染みがない私。せいぜい友達とショッピングモールに行ったり、カフェでまったりするくらい……あ。

「行きたいところある!」
「どこ?」
「猫カフェ」

 僅かに表情を緩ませた卯月さんの顔が、一瞬にして真顔に戻る。

「……くまごろうを裏切る気か」
「そういうわけじゃないけど、たまには猫ちゃんで癒されたいんです」

 ワンコを飼ってるからってみんなが犬派だと思わないでほしい。私は猫ちゃんも大好きだ。
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