4話
・・・
「―――で、ここで中火に落とす。卵を入れたら一気に掻き回して……」
フライパンから立ち上がる湯気と共に、ふわりとごま油の匂いが漂う。いつもの金曜日、キッチンでは卯月さんの料理教室が開かれている。もっぱら、生徒は私だけ。彼からの指示通りに私は手を動かしていく。
今日のメニューは、私が大好きな料理の一つ。黄金色の衣を纏った、とろとろの餡かけ天津飯。
フライパンの中では、ちょうどいい火加減で出来上がった卵がグツグツと音を立てている。トロトロだけど水っぽくない、理想通りの仕上がり。表面がふわふわな状態のまま、箸を使ってご飯の上に乗せる。
「わぁ……! 卯月さん見て見て、上手くできたよ! おいしそう!」
私が歓声を上げると、あんかけを作っていた卯月さんは得意げに目を細めた。フライパンを自在に操る彼の手際は相変わらず完璧だ。
「私が作ったら硬くなっちゃうのに。ふわとろにならなくて」
「半熟のタイミングって、初心者には難しいからな。まあ、こればかりは慣れだな。朝霧も何度か作れば出来るようになる」
「うん! 練習する!」
出来上がった天津飯をガラステーブルに並べながら、私はちらりと彼の顔色を窺う。見慣れた涼やかな瞳は、今は穏やかな色を湛えている。
今日は仕事が午後半休だったようで、彼の格好はTシャツにチノパンというラフな装いだ。それでも十分に洗練されて見えるのが、さすが卯月さんと言ったところ。
「ねえ卯月さん。仕事忙しい?」
向かい合わせに座り、夕飯を進めながら彼に尋ねる。
「―――で、ここで中火に落とす。卵を入れたら一気に掻き回して……」
フライパンから立ち上がる湯気と共に、ふわりとごま油の匂いが漂う。いつもの金曜日、キッチンでは卯月さんの料理教室が開かれている。もっぱら、生徒は私だけ。彼からの指示通りに私は手を動かしていく。
今日のメニューは、私が大好きな料理の一つ。黄金色の衣を纏った、とろとろの餡かけ天津飯。
フライパンの中では、ちょうどいい火加減で出来上がった卵がグツグツと音を立てている。トロトロだけど水っぽくない、理想通りの仕上がり。表面がふわふわな状態のまま、箸を使ってご飯の上に乗せる。
「わぁ……! 卯月さん見て見て、上手くできたよ! おいしそう!」
私が歓声を上げると、あんかけを作っていた卯月さんは得意げに目を細めた。フライパンを自在に操る彼の手際は相変わらず完璧だ。
「私が作ったら硬くなっちゃうのに。ふわとろにならなくて」
「半熟のタイミングって、初心者には難しいからな。まあ、こればかりは慣れだな。朝霧も何度か作れば出来るようになる」
「うん! 練習する!」
出来上がった天津飯をガラステーブルに並べながら、私はちらりと彼の顔色を窺う。見慣れた涼やかな瞳は、今は穏やかな色を湛えている。
今日は仕事が午後半休だったようで、彼の格好はTシャツにチノパンというラフな装いだ。それでも十分に洗練されて見えるのが、さすが卯月さんと言ったところ。
「ねえ卯月さん。仕事忙しい?」
向かい合わせに座り、夕飯を進めながら彼に尋ねる。