4話

 卯月さんは意外とお茶目な性格をしてる。

「ひどい! 誰よこんなイタズラしたの! くまちゃんがかわいそうだよ!!」

 彼の部屋に入るなり、私はぷんぷんと怒りながらリビングに飛び込んだ。抱きかかえていたくまちゃんを床に降ろし、ポケットからハンカチを取り出す。卯月さんはソファーでコーヒー片手にテレビを見ていたけれど、私の剣幕に驚いた様子で振り返った。

「どうした?  公園でトラブルか?」
「トラブルもトラブル! 大事件です!」

 卯月さんがソファーから腰を上げ、私達に近づいてきた。くまちゃんの顔を見るなり、ぶはっと一気に吹き出す。

「クソうける」
「全然面白くないですから!!」

 私がこんなに怒っているのは理由がある。くまちゃんが何者かの手によって、その身に辱しめを受けたからだ。
 事件はくまちゃんの散歩中に起きた。現場は散歩コースの途中にある公園。ここはくまちゃんの休憩ポイントでもある。公園内には自動販売機もあって、この後は卯月さんの部屋に訪問予定だったから、コーヒーでも買ってあげようかなと思った私はこの時、くまちゃんの側から一時的に離れてしまったんだ。
 5分後に戻ってみれば、ベンチの前で大人しく座っているくまちゃんに違和感を覚えた。近づいて、その違和感の正体に気づく。私が目を離した隙に、公園にいた誰かがくまちゃんに近付いたんだろう。くまちゃんの額には、黒のマジックペンで大きな文字が書かれていた。

『猫』

「猫じゃないし! 犬だし!!」
「そこかよ、ははっ」
「卯月さんは笑いすぎ!!」
2/19ページ
スキ