3話

 くまちゃんが腕の中ですんすんと鼻を鳴らす。チャーハンとは違う、美味しそうなお肉の匂い。炊飯器で何作ってたんだろう。

「でも、足りない成分は魚で補ってるよ」
「それだけじゃ駄目なんだよ。骨密度が下がる」
「こつみつど」
「くしゃみしただけで骨折れるぞ」
「えっ」

 それは嫌すぎる。

「……っていうのは大袈裟だけど、それぐらい肉って大事だから。適度に食えよ」

 そう言いながら、炊飯器から何かを取り出す。ほかほかと湯気を立てる大ぶりの肉の塊と、ほかほかに炊き上げたチャーハン。炊飯器が優秀な家電なのは知ってたけど、二つの料理を同時に完成させちゃうなんて。
 私が驚いているうちに、卯月さんは肉塊を包丁で薄くスライスしていく。厚さ数ミリの肉片に変わる様子を、私とくまちゃんは呆然としながら眺めていた。表面はしっとりと艶めいて、見るからに柔らかそうなチャーシュー。こんがりと焼き色がついているから、事前にフライパンで焼いたのかもしれない。

「チャーシューって、炊飯器で作れるんだ……」

 素直に感心していたら、卯月さんは菜箸でチャーシューを一枚摘まんだ。私の口元まで運んできて、食べてみろと促す。ぱくっと口に咥えて、噛んだ瞬間に煮汁がじゅわ、と溢れ出した。甘タレでからめたチャーシューが、口の中でトロトロに溶けていく様は絶品過ぎて圧巻。

「おいひい……卯月さん天才……」

 久々にちゃんとした肉を食べた気がする。感動で呆けている私を見て、卯月さんも満足そうな笑みを浮かべた。
 その後も慣れた手つきで、鮮やかにチャーハンを仕上げていく。最後にフライパンで焼き上げるあたり、彼のチャーハンにかける情熱度を感じさせる。完成された料理をテーブルまで運んで、私達は向かい合わせに座った。
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