3話

 さらりと告げられた内容に一瞬理解が遅れた。どうして? という疑問が頭をもたげる。卯月さんはペットを飼っていないはずなのに、わざわざペット可のマンションに住んでいるのは何か理由がありそう。もしかして……。

「彼女さん、ペット飼ってるんですか?」
「猫飼ってた」
「ネコちゃん」
「一緒に住むことになったときに備えて、最初からペット可のマンション選んでおけば問題ないだろって思ってたんだけどな……」

 当時の事情を振り返るように遠い目をする卯月さん。口調は淡々としてるけど、その表情には若干の哀愁が漂っている。一緒に住む気だったのに、彼女とうまくいかなくなっちゃったのかな。そういえば卯月さんと彼女がどんな状況なのか、私はまだ知らないままだ。

「あのー……、聞いてもいい?」
「ん?」
「嫌だったら答えなくてもいいんだけど……前に会った時の、あの頬の跡って……」
「ああ、言ってなかったっけ? 別れ話拗れまくって殴られたんだよ」

 あっさりと答えてくれて拍子抜けした。卯月さんの中では、もう過去の事だと割り切っているのかもしれない。
 別れ話に暴力沙汰。あの日の不機嫌だった原因はこれだったのかな。

「まだ別れ話が拗れてる感じ?」
「いや、とっくに終わってる」
「そうなんだ。寂しいね」
「別に。そろそろ潮時だと思ってたし。癇癪持ちだったからな、もう付き合ってらんねえわって思ってた」

 そう愚痴を零す。つまり現在、卯月さんはフリー。その事実は私の心を躍らせた。
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